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原題 Flatness
著者 B. W. Higmanw
分野 歴史/地理/文化人類学
出版社 Reaktion Books
出版日 2017/3/3
ISBN 978-1780237299
本文 紙、スクリーン、スマートフォンのタッチパネルなど、現代人は日々平ら――フラット――なものに囲まれて生活している。平らなグラウンドで公平なルールに沿ってスポーツを楽しみ、平らなキャンバスに描かれた絵画を鑑賞する。あまりにもありふれていて、普段の生活の中でそれについて考えることは少ない。

平らなものは実用的であるにもかかわらず、起伏のない地形や平面的な概念は単調でつまらないとされるのはなぜなのか。平らな建造物は視覚的多様性の減少にどのように作用してきたか。本書はまずこのような問いに対して、地球平面説から現代宇宙論に至るまで、人間が自然界をどのように知覚してきたかという視点から紐解く。さらに、技術面における意義、芸術・音楽・文学に表れるフラット性にも焦点を当てる。

創世神話、ユークリッド幾何学、KRAFTWERKのテクノ音楽――身近な事例から壮大な概念に至るまで、著者は学問の分野の壁を軽妙に飛び越え、ユニークな洞察が次々に示してみせる。枯山水、ル・コルビュジエのモダニズム建築、村上隆が提唱するスーパーフラットなど、日本人にも身近な要素が随所にちりばめられており、興味深く読めるだろう。