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原題 Everyday Bias
著者 Howard J. Ross
分野 社会学/文化人類学
出版社 Rowman & Littlefield Publishers
出版日 2014/9/5
ISBN 978-1442230835
本文 私たちは、物事を平等に、何の偏りもなく見て、判断を下していると思いがちである。しかし、私たちは思うほどには平等でも中道でもない。人間である以上、先入観、思い込み、偏向から逃れることはできないのである。

米国のバスケットボールリーグNBAの試合では、白人の審判は黒人の選手に対して、また黒人の審判は白人の選手に対してより多くファウルを宣言する傾向があるという。また、科学者の世界では、技術者が女性の場合、実際より技術を過小に評価されることがあり、給与の額を下げようとする傾向も見られる。

問題は、このような傾向が無意識に表われてしまうこと。自分が偏見を持っていることに、本人は気づかないのだ。

本書では、人間であれば誰でも何らかのかたちで偏向しているという視点から、だまし絵、言い間違いなどの豊富な例を挙げつつ、人間の持つ錯覚、思い込みの正体を科学的に明らかにする。そして、組織における力関係が行動に及ぼす影響や、なぜ人は偏見に気づきづらいのかという点にまで考察は及ぶ。

さまざまな文化的背景や主義を持つ人々が共に暮らす世界では、無意識の偏見を放置することは非常に危険だ。社内組織の構築や管理を目指す人々、また広く多文化共生を考える人々に読んでもらいたい。