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原題 Refrigerator: The Story of Cool in the Kitchen
著者 Helen Peavitt
分野 工学/歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2017/6/12
ISBN 978-1780237510
本文 私たちにとって最も身近な家電、冷蔵庫。今では家庭生活にすっかり馴染み、当たり前の存在になっているが、第2次世界大戦直前のイギリスでは、一般家庭の冷蔵庫保有率はほんの3%だった。冷蔵庫が家庭に入ってきたのは、それほど昔ではないのだ。

冷蔵技術が発達したのは19世紀。当然ながら、当時の社会に大きな影響を与えた。食品や飲み物を保存するために考案された氷室は、氷を入れて冷やす保冷庫や冷蔵箱に進化し、やがて電気式冷蔵庫へと発展を遂げる。本書では、この変遷を追いながら、科学技術の応用、産業デザイン、大衆文化、公衆衛生、地球温暖化など、関連するさまざまな話題も取り上げる。

消費者向けテクノロジーを専門とする学芸員が執筆しているため、専門知識に裏打ちされた言葉には説得力があり、解説には深みがある。冷蔵庫の歴史書であると同時に、当時から現代までのテクノロジーの発展を扱った読み物としても興味深い。また、美しい絵画やイラスト、レトロな写真など、視覚資料を眺めているだけでも楽しめる。