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原題 Solitude: A Singular Life in a Crowded World
著者 Michael Harris
分野 心理学/自己啓発
出版社 Doubleday Canada
出版日 2017/4/18
ISBN 978-0385686044
本文 インターネットに常時接続している世界で、本当にひとりになり、その豊かさを享受する経験は急速に枯渇している。しかし、ひとりの時間は、人間の知的・創造的活動にとって欠かせない、守るべき資源である。風呂の中でアイデアがひらめいて「エウレカ!」と叫んだアルキメデスをはじめとして、多くの偉大なる思想や発明はひとりの時間に生まれたのだ。

最近の研究によれば、脳が何にも集中して「いない」ときこそ、脳のデフォルトモードネットワーク(DMN)が活性化され、記憶処理などの創造的な活動がフル回転でおこなわれるという。ひとりのときに突然どこからともなく「ひらめきが降りてくる」のはそのためだ。

効率重視の現代社会で、何もせずにぼんやりしていることは罪であるかのように思われている。その罪悪感や孤独への恐怖ゆえに、私たちはSNSやゲームなど、ひとりの時間を食いつぶそうとするさまざまなサービスの魔力にあらがえない。だが、孤独は「ひとり」の失敗形であり、真にひとりでぼんやりすることは、非効率などではなく豊かなクリエイティビティの源泉となる。また、逆説的だが、真のひとりを体験してこそ、本当の意味で近しく人と交わることができるのだ。

さぁ、もう一度「ひとり」になろう。