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原題 From Broken Glass: My Story of Finding Hope in Hitler's Death Camps to Inspire a New Generation
著者 Steve Ross
分野 歴史/回顧録
出版社 Hachette Books
出版日 2018/5/15
ISBN 978-0316513043
本文 ボストンには、高さ15メートル強のガラスの塔が6つそびえる場所がある。ニューイングランド・ホロコースト・メモリアルだ。6つの塔はナチスの強制収容所の煙突を表し、それぞれの塔には収容されていたユダヤ人の収容番号が刻まれている。

このメモリアルの建立を呼びかけたのが本書の著者、スティーヴ・ロスだ。8歳のとき、住んでいたポーランド人の村をナチスに侵略されたそれから6年、彼はアウシュヴィッツ、ビルケナウ、ダッハウなどの「死の収容所」で想像も及ばぬ残酷な仕打ちを見聞きし、自らもそれに耐えて過ごした。子どもながら、遺体を火葬場に移す作業を課せられていたこともある。

ついに解放されたときには、自分の年齢も忘れているほど疲弊し、餓死寸前だった。自分のほかに生き残った家族は1人だけ。大人になってからは40年近く学校に勤務し、教育長を務めた。

収容所にいる間、過酷な環境にあっても立ち上がろうとする収容者同士の思いやりに触れた著者は、若い世代に自分のようなつらい思いはさせまいと強く心に決めている。その意志の表れが、ホロコースト・メモリアル建設とこの回想録だ。