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原題 Crimes That Changed Our World: Tragedy, Outrage, and Reform
著者 Paule H. Robinson, Sarah M. Robinson
分野 法律/歴史
出版社 Rowman & Littlefield Publishers
出版日 2018/6/8
ISBN 978-1538102015
本文 歴史を振り返ると、皮肉なことに、凶悪犯罪や重大事故がきっかけとなって、われわれの社会がよくなることがある。本書では、20世紀のアメリカで起こった事件のなかから、法改正など社会的に大きな影響を与えたものを取り上げ、事件の概要、影響、それによって何が変わったのか、という流れを紹介する。取り上げられているのは、監察医制度、空港セキュリティー、DNA鑑定、911通報など、どれも現在では当たり前のものばかりだ。

事件の概要は現在形を用いて時系列で語られるため、臨場感にあふれ、まるで現場に居合わせたような感覚にすらなる。そして、読者が事件の目撃者となり、その悲劇性、重大性を追体験させられたあと、事件の背景や、誰がどのような声を上げ、人々の意識がどう変わったのかという事件後の社会的影響が具体的に語られる。

著者は刑法の専門家であり、その鋭い洞察と確かな分析が見どころであることはもちろんだが、そこに絡みあう人間ドラマも垣間見ることができ、読み物としても引き込まれていく。

人間は過ちを犯す。悲劇は起きる。しかし、重要なのはそのことにどう対処していくかどうかだ。これからの未来に、われわれがどう生きていくかについても、重要な示唆を与えてくれる。