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原題 Bolder: making the most of our longer lives
著者 Carl Honoré
分野 心理学/自己啓発
出版社 Simon & Schuster UK
出版日 2018/12/13
ISBN 978-1471164354
本文 高齢化社会と言われて久しいが、歳を取ることについて明るいイメージを持っている人はどれだけいるだろうか。『スローライフ入門』などで常に社会動向を取り上げてきた著者が新著で取り上げたのは、その「歳を取る」ということについてである。

歳を取ることは避けられない。年々、目も耳も悪くなり、活動量も減り、外見も若者に比べれば見劣りするようになる。その上、世の中にはアンチエイジング商品が溢れている。これでは、歳を取ることに不安を持たないほうが不思議である。

しかし、著者はそういった固定観念に疑問を呈している。そもそも、なぜ、歳を取ることに悪いイメージを抱くようになったのか。その原因を理解することが年齢に対する偏見や年齢差別をなくすことになるという。また、著者は世界各地で、いわゆる老人のイメージを破り、仕事や私生活で元気に活動している人たちを紹介する。高齢化率が進んでいる日本でも取材を敢行。政府や企業が行っている取り組みや高齢者の活動を数多く取り上げている。さらには、文化が多様化し、医療やテクノロジーが発達したことで、高齢者に新たな可能性が広がっていると示唆している。

本書を読めば、高齢者自身、そして社会全体が歳を取ることへの偏見を捨て、これまで正しいと考えられていた人生のシナリオを書き換える時なのだと考えさせられるだろう。歳を取ることは重荷ではなく、人生における幸運であることを教えてくれる一冊である。