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原題 Rock Art: The Meanings and Myths Behind Ancient Ruins in the Southwest and Beyond
著者 Stewart M. Green
分野 地球科学/民俗学/考古学/観光ガイド
出版社 Falcon Guides
出版日 2018/9/28
ISBN 978-1493017072
本文 日本でロックアートという言葉は一般的ではないかもしれないが、ラスコーの洞窟壁画はロックアートであると言えば、イメージしていただけるだろうか。実際のところ、ロックアートは世界各地に存在している。古代人が巨石や洞窟、表面がなめらかな岩、さらには未舗装道路に謎めいた絵や線を残した。

著者はこれまでに数多くのガイドブックを執筆し人気を得てきたが、本書では、幼少期から興味を持ち、学んできたロックアートを徹底的に紹介する。読者は、この一冊で想像を絶するロックアートの世界を知ることができる。

たとえば、米国ユタ州のホースキャニオンには「グレートギャラリー」と呼ばれる岩絵がある。ピクトグラフのパネルは長さ61メートルにわたり、21個のイメージが岩肌に描かれている。7000年以上前にこの地に先住していた人々の作品である。

では、誰がどのようにして謎めいた絵を描いたのだろうか。何のためにこういったイメージを印したのだろうか。宗教的・精神的な表現なのか、文字としての機能があったのか。地図として利用されたのか。著者は様々なスタイルのロックアートの背景を丁寧に探っていく。その一つ一つが驚きに満ちている。

また、本書は全米各地のロックアートを詳しく紹介。ロックアートの現場に行ってみたい人にとって最高のガイドブックになっている。さらには、感動を他の人たちと分かち合うために、美しいロックアート写真の撮り方についての解説もある。

専門的な内容だけではなく、美しい写真と切れ味の良い文章で書かれた本書は、幅広い年代の読者がロックアートに興味を抱くきっかけとなるだろう。