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原題 The Pride Guide: A Guide to Sexual and Social Health for LGBTQ Youth
著者 Jo Langford
分野 社会/教育
出版社 Rowman & Littlefield Publishers
出版日 2018/6/1
ISBN 978-1538110768
本文 本書は、性教育のベテランセラピストが思春期のLGBTQ(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・クイア)のために書いた、性と社会に関する一冊である。米国の社会状況や法制度に基づいて執筆されているが、育つ国に違いはあっても、思春期の子どもたちに大きな違いがあるわけではない。むしろ、精神的にも身体的にも不安定な思春期を情報が少ない日本で過ごすLGBTQの子どもたちにとって、この一冊は大きな助けになるはずだ。

本書は綿密なリサーチに基づき、生物学、カミングアウト、デート、お気軽なセックス、いじめ、暴力、インターネットの利用など現在の社会で思春期の子どもたちと両親や保護者が必要としているすべてをカバーしている。

LGBTQを取り巻く現実は厳しいものである。本書で、著者はその現実をしっかりと見据えているが、文章は深刻になりすぎず、思春期の子どもたちの気持ちに寄り添ったものになっている。また、各章の目次にヒットソングのタイトルを使用し、子どもたちが手に取りやすいような工夫がみられる。

また、本書の特徴は言葉の定義を丁寧に説明している点である。巻末には用語解説も用意されている。たとえば、sex(性)は身体の部分や生物学に関連したものであり、誕生時に男か女か決定する。一方でgender(ジェンダー)は社会的事象からみた性である。近年の研究で、ジェンダーは男と女の2つだけに分類されないというのが定説だと著者は説明する。

思春期の子ども向けに書かれているが、テレビに出演している「オネエ」をひとくくりに「ゲイ」と認識しているような人が多い日本では、LGBTQに関する知識を深める一冊としても読める。