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原題 Eros, Wollust, Sünde: Sexualität in Europa von der Antike bis in die frühe Neuzeit
著者 Franz X. Eder
分野 歴史
出版社 Campus Verlag
出版日 2018/9/7
ISBN 978-3593509549
本文 極端な構築主義者であっても、セクシュアリティに関しては、その規範が完全に社会や文化によって構築されたと言い切ることはできない。そのため、性やセクシュアリティを歴史的に考察することは複雑で難解なものである。本書は、豊富なソースと最新の知見を用いながら、その難解なテーマをわかりやすく一望できるように書かれている。

本書が対象とする時代・場所は、近代より前の時代のヨーロッパである。近代より前の時代の歴史をたどることは当然、近代以降の考察を行うにあたっても必要なことである。エロスに政治的・社会的文脈が付与された古代ギリシア・ローマ期に始まり、セクシュアリティに懐疑的であったユダヤ教と初期キリスト教の興隆期、続いてその後の中世を経て、新たにセクシュアリティの統制と規範化が行われた宗教改革前後(15世紀から17世紀)までの時期について、時代順に考察されている。

あるセクシュアリティがどのように個人から他者へ、そしてコミュニティに波及し、ついには政治的・社会的構造の中に組み入れられ、持続的な規範になっていくのか。そのことを、本書によって知ることは、歴史学、社会史、文化学についての新たな視点を得ることにもつながるだろう。

著者は本書の続編として、17世紀から21世紀初頭を対象にしたセクシュアリティの歴史本も計画している。