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原題 Five Photons: Remarkable Journeys of Light Across Space and Time
著者 James Geach
分野 宇宙科学、天文学
出版社 Reaktion Books
出版日 2018/10/10
ISBN 978-1780239910
本文 星はどうやって輝いているのか? 最も遠くからやってくる光とは一体どんなものか? ブラックホールが燃え立って、遥か銀河をまたいで信号を送るかがり火となるとはどういうことか? 大昔の電波信号を分析することで、宇宙で最初に星が輝き始めたときのことが分かるかもしれない? そもそも光とは一体何なのか?  こんなことを不思議に思ったことはないだろうか。

そういった疑問に対して、この本は、時間と空間を進む光の旅を通して分かりやすい説明を与えてくれる。これは、量子物理学、一般相対性理論、ブラックホール、暗黒物質、そして暗黒エネルギーという5つの天文物理学上の観点から描いた、光の素粒子(光子)の物語である。ビッグバンから140億年の旅を経て我々のところに届いた光の分析を元にした壮大な宇宙の物語となっている。

『ホーキング、宇宙を語る』(早川書房、1995)を読んで、ぜひその先をと待ち望んでいる人も多いはずだ。この本はそういう人たちのための本である。かといって複雑な数式や量子力学などはほとんどなく、あるいは退屈な教科書調でもない。時に、天文物理学者や宇宙科学者たちの偉大な業績の細部に迫ることさえある。光の辿ってきた道をビッグバンまで遡って行くという壮大な旅を通して、宇宙の成り立ちをより深く理解する発見の旅へ我々を誘ってくれる。