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原題 Satellite: Innovation in Orbit
著者 Doug Millard
分野 宇宙科学、航空科学、その他技術工学
出版社 Reaktion Books
出版日 2017/2/7
ISBN 978-1780236599
本文 普段の生活では全く気に止めることもないが、我々の頭上で何千もの人工衛星が今も地球の周りを回っている。そして我々の生活に密接に関わっている。明日の天気予報も、好きなテレビ番組の受信も、ケイタイの位置情報やカーナビのGPSも、すべて人工衛星あってのものだ。

これほど身近なものであるはずなのに、人工衛星についてほとんどと言っていいほど知られていない。例えば、人工衛星は一体どんな形をしているのか? どんな風に進化してきたのか? どんなことにまたどのように使われているのか? そうした疑問にこの本はわかりやすく答えてくれる。

それだけでなく、この本は人工衛星が今に至るまでの驚くべき物語――人工物が地球の周りを回るなどということがまだ絵空事でしかなかった時代から、実験が重ねられ科学技術の発展と共に人工衛星が実現し、冷戦時代の政治的・国家的威信とも深く関わり、科学、文化、果てはポップ音楽に影響をもたらすまで――を開陳してくれる。つまり、人工衛星が人類の技術的、政治的、文化的工芸の歴史として描かれているのだ。

サイエンスミュージアムの協力のもと、多数の色鮮やかな画像が随所に用いられており、この美しい写真を見ているだけでもワクワクしてくる。宇宙科学ファンならずとも大いに楽しめる、そして学べる一冊となっている。