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原題 Biographic Klimt
著者 Viv Croot(著者)、Dr Diana Newall(編者)
分野 美術/歴史
出版社 Ammonite Press
出版日 2017/11/7
ISBN 978-1781453117
本文 19世紀末ウィーンを代表する画家、グスタフ・クリムトの一生と作品について、グラフィックデザインのイラストを用いながら分かりやすくまとめた書。『接吻』等の傑作はどのようにして生まれたのか、クリムトの人生や時代背景、交友関係等を踏まえつつ解説していく。イラストが多く文章も平易ながら、内容は一歩踏み込んだものとなっており、美術に興味のある読者でも知らなかったことがたくさんあるだろう。また、同時代の歴史や文化についても触れており、美術以外の面においても、知的好奇心を満足させられる内容となっている。

まず第1章「クリムトの一生」では、生まれた年や場所、家系図、人生年表などクリムト本人の基本情報に加え、彼を取り巻く女性たち、大変な猫好きであった事実、生涯にわたってのミューズであったエミーリエ・フレーゲなどにも触れる。

第2章「クリムトを取り巻く世界」は、クリムトが活躍した時代のウィーンについての解説。当時のウィーンの芸術家たちや、彼らとクリムトの交友関係、また美術界の潮流でありクリムト自身も属した「ウィーン分離派」について、簡潔にまとめている。

第3章「クリムトの作品」では、実際に作品を図示しながら解説する。本章で取り上げる作品は、『接吻』『ベートーヴェン・フリーズ』『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I』。クリムト本人の作風の変化や、金箔の使用、影響を受けたもの(日本美術からも!)についても簡単に解説する。また、制作環境や総作品数、うち女性を描いた作品数などの豆知識についても触れる。

最後に、第4章「クリムトの遺したもの」では、彼の美術作品のみならず、残した手紙やアトリエ、弟子のエゴン・シーレらについても紹介する。近年映画の題材にもなった『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I』の所有者変遷や、クリムト作品の現在の所有者の大まかな分布図、彼の作品がオークションにていくらで落札されたか、などにもページを割いている。

本書の一番の特徴は、全ページにわたってフルカラーのグラフィックデザインを使い、画家について分かりやすく説明していることにある。地図や相関図など元々図にした方が適している情報だけでなく、本来文章だけで表現できるようなことでも図にすることで整理されており、読みやすく頭に入りやすい。文章ばかりだと読む気がしないという読者層にも訴求できる体裁。かと言って、内容が子供だましというわけではなく、美術史家のDr Diana Newallの編集を経て大変充実したものとなっている。

ページ数は96ページと少なく、忙しい現代人が気軽に読める分量。もう少し深く研究したい人はここからさらに専門書をあたる必要があるが、クリムト入門としては、本書は内容・分量ともに申し分ない。

◎「The Biographics」シリーズについて:
偉大な芸術家、思想家の人生に新たな光を当てるヴィジュアル伝記シリーズ。偉人の功績や思想、生活習慣などから50のキーワードをピックアップし、カラフルな図解やチャートでヴィヴィッドに紹介。すべてのアート愛好家に贈る「目で楽しむ伝記」