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原題 Sucking Eggs: What Your Wartime Granny Could Teach You about Diet, Thrift and Going Green
著者 Patricia Nicol
ページ数 312ページ
分野 社会史/生活史/エコロジー
出版社 Chatto & Windus
出版日 2009/5/7
ISBN 978-0701182403
本文 イギリスはもはや、飽食の帝国である。肥満児が問題視される中、発展途上国から搾取した食べ物などの資源を無駄にあまらせ、捨てている。著者は、このような現代人の生活へのアンチテーゼを探してきた。もっと合理的に資源を活用し、燃料や食べ物を賢く節約するやり方は今までになかったのか。

そこで著者が発見したのが第二次世界大戦中の国家総動員である。戦時中、物資統制が行われたことで、イギリスは資源の分配が格段と効率化された社会になった。戦争という目前に迫る危機に、国民は知恵を絞って対抗した。人々の健康状態はむしろ向上し、福祉が充実した時代だったのだ。物がなくて貧しく、当時を経験した人たちは、つらい時代だったと言うが、著者は、まさに戦中に、現代社会の基盤が築かれたのだと論じる。

「早い安いうまい」を兼ね備えた食堂も、リサイクルの概念が生まれたのも、戦時下のことだったなど、意外な指摘が続く。プロパガンダ用のポスターを初めとした豊富な資料から当時の生活を生き生きと浮かび上がらせ、「我慢」だけでなく「工夫」を重ねてきた人々の暮らしを描いている。本書の見どころは、これらの発見を現代の生活にどう役立てるかを論じている点である。