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原題 Titanic (Accompanies the Channel 4 TV series Titanic: The Mission): The Real Story of the Construction of the World's Most Famous Ship
著者 Anton Gill
分野 ヨーロッパ史/英国/産業
出版社 Channel 4
出版日 2010/10/28
ISBN 978-1905026715
本文 タイタニック号が処女航海に向かったのは1912年4月10日。世界最大の豪華客船は、その時代の最先端技術を搭載した乗り物だった。スーパーパワーとして君臨していた英国で繁栄を極めた造船産業が、その英知を結集して製造した客船は、英国の製造業の絶頂期を象徴したものともいえる。英国のテレビ局、チャンネル4のドキュメント番組『タイタニック---ザ・ミッション』にともなって製作された本書は、数々の画像を織り交ぜながら、その「夢の客船」を現実の形にした人々の、今まで語られてこなかった姿を浮き彫りにしている。

何百万という数のリベットを打ち込んだ屈強な男たち。リベットを打ちつける音で耳が聞こえなくなるという危険を冒しながらも作業を続行した。要塞のような鉄鋼の船体をしっかりとつなげているのは、このリベットなのだ。

大西洋を横断する強大な客船の動力となるエンジンを構築するため、困難なタスクに果敢に挑戦した技術者たち。彼らの努力で速度23ノットを確保できた。

最新鋭の通信システムと巨大なボイラーを組み込んだ電気技術者たち。ボイラー1機につき、現在の住宅400軒分に相当する電力供給が可能だった。

細部にわたるまで贅を尽くした客室は、高度な技術を持つ大工や家具工などの職人や芸術家が手掛けた。

タイタニックそのものは処女航海で海の藻屑と化した。しかし、その素晴らしい豪華客船を作り上げた何千人という人たちの苦労と技は、今もなお生き続けている。