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原題 The Power of Empathy: A Practical Guide to Creating Intimacy, Self-understanding, and Lasting Love in Your Life
著者 Arthur Ciaramicoli, Katherine Ketcham
分野 心理学
出版社 Dutton Adult
出版日 2000/4/3
ISBN 978-0525945116
本文 エンパシー(共感)とは、自分と他人とは違うことを受け入れながら、家族や友人が経験している苦しみを相手の立場になって理解しようとする姿勢と実践のことだ。本書は、豊富なカウンセリング事例と著者自身の経験をもとに、エンパシーが持つ正負両面の力を解説し、エンパシーを日常生活に取り入れ、周りの人々との絆をよりよいものにするための具体的な方法を紹介する。

エンパシーは心理学では自己移入と訳され、本書でもシンパシーの感情移入とは区別される。著者は、相手の立場で苦しみを理解することがエンパシー、相手とともに苦しむことがシンパシーであると解説する。エンパシーは相手と自分との違いを受け入れた上で相手を最大限に支援することであるのに対して、シンパシーはしばしば相手の状況を自身の経験や常識によって一般化して判断しまうという。

著者は若くして弟を自殺で亡くしており、なぜ弟を救えなかったのか、どうしたら救えたのかという切実な問いが全編を貫いている。そのため、あくまで専門家らしい丁寧な語り口でありながら、独特の迫力もあり、他者との関わり方を根本から変える説得力を持っている。心理学の入門書としても読めるが、生きづらさを抱えるすべての人に、人生論、自己啓発書として読んでもらいたい本。