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原題 TOYO
著者 Lily Chan
分野 ノンフィクション/伝記
出版社 Black Inc.
出版日 2012/8/30
ISBN 978-1863955737
本文 中国人の血を引き、日本に生まれ、太平洋戦争後、オーストラリアへ移住した日本人女性「トヨ」。子供のころから祖母トヨの語る家族の昔話に魅せられていた孫娘が、親戚や関係者に丹念な聞き取りをし、その人生を紐解く。2013年度のDobble Literary Award(オーストラリアの優れた女性著者の処女作に贈られる賞)を受賞した注目作。

未婚の母に育てられたトヨは、父が中国人であることを隠しながらも、父の訪れを心待ちにして子供時代を過ごす。そんなときに太平洋戦争が起こり、大阪にも爆弾が降り注いだ。トヨ親子の生活は根無し草のようにゆらぐ。戦火を何とか生き延びたトヨは、終戦後、中国系移民の息子と出会い、大家族の張一族に嫁ぐ。子供も生まれ、やっと落ち着いた生活が送れるようになった矢先、夫が若くして他界。トヨは張一族から離れ、1人で立派に子供たちを育て上げるが、在日中国人に対する差別を実感する出来事が立て続けに起こったことで、息子と中国人の嫁、孫たちを連れて、西オーストラリアへ移住することを決意する。

新天地でも持ち前の好奇心を発揮し、新しい生活に適応しようと奮闘するトヨ。英語クラスに通い、日本の伝統を伝えるために日本語教室を作り、折り紙を教える。しかし、オーストラリアに順応して英語で会話するようになった孫たちに囲まれると、老いたトヨの心には寂しさと日本への郷愁がつのるのだった……。