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原題 Maria Mitchell: The Soul of an Astronomer
著者 Beatrice Gormley
ページ数 166ページ
分野 児童書/伝記(対象年齢9歳〜12歳)
出版社 Eerdmans Books
出版日 2004/2/1
ISBN 978-0802852649
本文 「永遠に生きるかのように学べ。明日死ぬかのように生きろ」
という言葉を残したアメリカの女性天文学者、マリア・ミッチェルの伝記である。

マリアは1818年、マサチューセッツ州ナンタケット島に生まれ、父から天文学を教わった。厳格なクエーカー教徒の家に育ったマリアは非常に正直な人間に育ち、勉強が得意で、16歳のときには学校で数学を教えていた。18歳になると図書館で司書の仕事につき、大量の本を読むかたわら、多くの知識人と話す機会に恵まれるようになる。

1847年、30歳になったマリアがいつものように望遠鏡をのぞいていると、新彗星を発見、国際的な栄誉を得る。そして1848年、女性として初めてアメリカ芸術科学アカデミーの会員に選ばれた。

生涯を通してユーモアを忘れず、精力的に活動したマリアは、後半生で女性の教育と地位向上に努めた。「私は女性を信じています。天文学にもまして、です」という言葉が印象深い。教え子には「興味深いのは彼女の業績ではなく、彼女自身だ」と言われるなど、その人柄と個性的な授業で慕われていたようだ。

小学校高学年向けと言ってもかなり丁寧に作りこまれている。伝記ではあるが単純に出来事を年代順に記すのではなく、章別にテーマを設け、マリアの人となりや宗教観もよくわかるように構成が工夫されている。多くのエピソードが盛り込まれ、読み物として非常に面白い。今から約200年も前に生まれた女性が、これほどまでに強く生き、ラディカルな考え方を持っていたことは驚きだろう。