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原題 Kaluchua: Culture, techniques et traditions des sociétés animales
著者 Michel de Pracontal
分野 動物行動学
出版社 Seuil
出版日 2010/10/14
ISBN 978-2020513067
本文 日本の霊長類研究のパイオニア、今西錦司は、人間以外の動物の文化的行動を「カルチュア」と呼び、その存在を公言した。これは動物と人間をはっきりと区別する西洋の伝統的な二元論に対立するものだった。しかし、世界中で徐々にカルチュアの存在を裏付ける記録が集まり出すことに! 本書では、半世紀以上にわたって多くの科学者たちが進めてきた研究内容を、気鋭の科学ジャーナリストがわかりやすく解説する。

海水で味付けをしてサツマイモを食すニホンザル、石でくるみを割り、小枝でエサを獲るための道具を作成するチンパンジー。牛乳びんの蓋を開けてしまうシジュウカラや、「よそ者」と「身内」をはっきり区別し、執拗な排除行動をとるネズミ。これらは遺伝子学的に刷り込まれた習性ではなく、ある特定の集団に後天的に培われた習慣なのである。同じ種であったとしても、その食性や行動は地域によって異なる。まさに「文化の違い」なのだ。

本書を通して動物たちの文化的行動を俯瞰することで、「我々人間も一生物種としてのヒトなのだ」という思いが強くなる。人間中心主義を非神話化し、奢った社会観や価値観に警鐘を鳴らす一冊。我々のあるがままの姿を理解するためのヒントが満載である。