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原題 Happy City: Transforming Our Lives Through Urban Design
著者 Charles Montgomery
分野 都市/環境/心理学
出版社 Farrar, Straus and Giroux
出版日 2013/11/12
ISBN 978-0374168230
本文 無秩序、無計画に開発が郊外へ広がっていくスプロール現象が何十年と続いた後、かつてないほど多くの人々が再び都市へと戻ってきている。便利で過密な都市生活が、ある意味、現代の環境そして資源危機への万能薬として処方されているが、私たちは本当にそれで幸せになれるだろうか。地下鉄やタワーマンションが車頼みのスプロール現象を改善するものになるのだろうか。

都市計画の専門家である著者は、世界のさまざまな都市を旅し、多くの人々と出会いながら、都市のデザインと幸福を科学的に考える新たな流れの中でこの問いかけに対する答えを見いだしていく。コロンビアの首都ボゴタに歩行者天国や真っ赤なバスを導入して都市にはびこる不安を緩和した市長、中世トスカーナの街から得たアイディアを現在のニューヨークにもたらした建築家、パリの高速道路をビーチに変えてしまった活動家、そして機能を考えながら道や近隣のデザインを切り分けることで街を変革したアメリカの郊外居住者たち……。

著者の軽快な文章は、幸せを求めてお金、車、物質に見当違いの力を注ぎながら都市で暮らす私たちに、真の幸せとは何かを考えるように導いていく。「ハッピーシティ」を目指すと、自然と環境に配慮した低炭素志向の都市になる。つまり、人々の幸せのために都市を修復することが、急速な都市化と環境悪化が進む現代社会における喫緊の課題に取り組むことにもなるのだ。登場人物たちの生き生きとした描写にひきつけられつつ、今後の都市の在り方について、新たな視点を得られる書。