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原題 Faberge's Eggs: One Man's Masterpieces and the End of an Empire
著者 Toby Faber
分野 歴史/美術/文化
出版社 Macmillan
出版日 2009/3/6
ISBN 978-0330440240
本文 キリスト教でクリスマスとならんで大切なのが復活祭(イースター)。その日曜日に、復活の象徴である卵に彩色、あるいは模様を描いたものを飾ったり贈ったりする習慣は今も続いている。

1885年、ロシア皇帝アレクサンドル3世は皇后マリアに、御用宝石商カール・ファベルジェにデザイン・製作させたイースター・エッグを贈った。これがインペリアル・イースター・エッグの第1号だ。皇帝は毎年デザインに工夫を凝らした美しいイースター・エッグを皇后に贈るようになり、この習慣はニコライ2世にも受け継がれ、1916年まで続けられた。

産業の近代化、農奴制の廃止、自由主義の台頭と、押し寄せる時代の波に抗いながら専制を守ろうとしたロマノフ王朝最後の2人の皇帝、アレクサンドル3世とニコライ2世。著者は社会的背景や事件をジャーナリスティックに描きながら、彼らが妻や母のためにファベルジェに作らせたイースター・エッグにまつわるエピソードを語る。また、家族への愛の贈り物だったイースター・エッグが、ボリシェビキ、王族、財産相続人、実業界の大物、新興起業家と、様々な人間の手を経ながら、オークションで億単位の値段で取引される品になる物語も非常に興味深い。

13個のイースター・エッグは写真でも紹介されており、ファベルジェの精緻を凝らした細工、デザインの美しさ、宝石や貴金属を惜しげなく使った究極の豪華さに読者は目を見張るだろう。