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原題 What's Yours Is Mine: Against the Sharing Economy
著者 Tom Slee
分野 ビジネス/テクノロジー
出版社 OR Books
出版日 2015/11/19
ISBN 978-1682190227
本文 日本にも最近参入しだしたAirbnb(自宅の空き部屋に人を有料で泊める「民泊」のインターネット仲介サイト)や、Uber(スマートフォンのアプリを使ったライドシェア[相乗り]と銘打った配車仲介サービス)に代表される「シェアリング・エコノミー(共有型経済)」――本書はこの新しいビジネスモデルが潮流になりつつある欧米での現状、特にその急成長の背景、仕組み、実態を批判的立場から検証している。

シェアリング・エコノミーはそもそも、非営利の公共仲介サイトとして人と人の繋がりや助け合いに価値をおいた共同体ビジョンを基盤に出発した。だが今日では、個人が物、技術、能力、情報をシェアする「私のものはあなたのもの」コンセプトが、自由市場の概念やベンチャーキャピタリストに骨抜きにされ、株主や資本家が利益を追求する「あなたのものは私のもの」ビジネスに変貌している。彼らは、あくまでも個人がマイホームやマイカーなどの物、家の掃除などのサービスを提供して収入を得ることを可能にし、地域経済の活性化に貢献しているというビジネスの社会的意義を強調して、その主張をデータで裏付けているが、実はデータを都合良く選び、見せているにすぎない。

本書では「Web2.0」「ロングテイル」などのビジネス現象を適切な文献からの引用によって説明し、Amazon、eBay、Wikipediaなどの馴染みのある有名サイトの実例も挙げつつ、AirbnbとUberを分析する。シェアリング・エコノミーを社会的な問題ととらえているが、統計データや著名な文献、最新情報をもとにバランスのとれたアプローチをしており、全体的に読みやすいビジネス教養書となっている。

このビジネスモデルがこれから日本でも定着するかどうか注目されているなか、先行している欧米での弊害や成り行きは興味深く、この分野を理解する良い参考書になるだろう。