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原題 The Lost Boys: Inside Football's Slave Trade
著者 Ed Hawkins
分野 社会/スポーツ
出版社 Bloomsbury Sport
出版日 2015/11/19
ISBN 978-1472914934
本文 現在アフリカでは、少年たちの多くが貧しさから抜け出すために、ヨーロッパでサッカー選手として成功することを夢見ている。しかし、地元で未来の大スターになれるとスカウトされ、代理人や関連業者になけなしのお金をはたいてヨーロッパにやってきても、実際にプロになれるのはほんの一握り。すぐにクラブの目にとまって契約を結べなければ、頼りにしていた業者がそのまま消えてしまうこともある。住むところもお金もない状態で、不法滞在者として異国に放り出されてしまうのだ。こうなると、生き残るためには犯罪に手を染めるしかない。これはもう、現代の“奴隷貿易”だ。

2009年、こうした状況を憂慮したFIFAは、18歳以下の国際移籍を禁じるなどの条項を含む、未成年者の国際移籍に関する規定を定めた。しかし、悪質な代理人や業者はこの規定の抜け穴をうまく利用し、いまも少年たちを食い物にして甘い汁を吸い続けている。

またカタールでは、まるで人身売買のように、将来有望な少年を家族から引き離し、集めている。これは2022年にワールドカップを開催するこの国が、代表強化のために行っていることなのだろうか?

こうしたさまざまな搾取を生み出す原因は一体何なのか? 若く才能ある選手を求めるバルセロナやレアル・マドリードといったヨーロッパのビッグ・クラブに責任はないのか? FIFAはなぜ、悲惨な状況を改善することができないのか? 著者はパリ、ジュネーブ、キプロス、ベルギー、ガーナ、ロンドンなど世界中を回り、脅迫にあいながらもこの問題の真相に迫った。