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原題 Famous Works of Art: And How They Got That Way
著者 John B. Nici
分野 美術史
出版社 Rowman & Littlefield
出版日 2015/9/17
ISBN 978-1442249547
本文 今では名画中の名画として不動の地位を誇る《モナ・リザ》だが、1911年に盗難に遭うまでは、この絵が世間の注目を集めることはなかった。この事件をきっかけに《モナ・リザ》は一躍、世界でも指折りの名画の一つに仲間入りしたのだ。

このように、何かがきっかけとなり美術品としての価値が大きく変わった例は多い。スキャンダルがきっかけで作品が有名になったマネやストラビンスキー、作品の設置場所が人気の源といわれる《サモトラケのニケ》やアメリカの自由の女神、その特異な人生ゆえに死後絵が注目を集めたゴッホなど、その作品が有名になったきっかけやタイミングはさまざまだ。だとすれば、その作品を有名にしているのは美術品としての真価以外のものといえるのではないか。本書では20の美術品を例に挙げ、この素朴な疑問の答えに迫っている。

本書の目的が美術的な価値以外のものを検証することとあって、さまざまな要素に翻弄される美術品の名声とその運命を、時代背景や政治、文化、国際関係など幅広い視点からユーモアも交えながらわかりやすく描いている。美術史としてだけでなく、視点を変えた世界史の読み物としても楽しめる作品だ。