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原題 Run the World:My 3,500-Mile Journey through Running Cultures Around the Globe
著者 Becky Wade
分野 自伝/スポーツ
出版社 William Morrow Paperback
出版日 2016/7/5
ISBN 978-0062416438
本文 大学では陸上中長距離選手として順調にキャリアを積み、オリンピックにも出場したベッキー・ウェイド。卒業を迎え、マラソン挑戦を視野に入れて自分の体や走ることへの情熱を見つめ直していた彼女は、地球の反対側にいるライバルたちの陸上競技へのアプローチ法に興味を募らせる。そして2012年、彼女は向こう1年間のスケジュールをすべて白紙にし、ランニングシューズ4足をかばんに詰めて旅に出た。訪れた国の数は22。そのすべてに独自の「走り」の文化や歴史があった。山道、競技場、街の歩道、田舎道――各国のランナーと出会い、「走り」のアプローチを吸収しながら、ウェイドは1年間で約5600キロを走り抜けた――。

本書では各国のランナーとの交流、合同トレーニング、ランナー視点で見た町の様子や食生活など、その国ならではの興味深い描写が続く。日本では東京、横浜、京都などに滞在(第6章)。過酷なトレーニングで五輪メダリストになった有森裕子氏、驚異的な頻度でレースに出場している公務員ランナーの川内優輝氏、マラソン好きとして知られる村上春樹氏、駅伝に対する国民の熱い支持などを取り上げて、日本人が長距離走に抱く精神的な意味に思いをはせる。

世界中の「走り」を吸収し、アメリカに戻ったウェイドは、カリフォルニア国際マラソンで優勝し、鮮烈なマラソンデビューを飾る。その後は故障などに悩まされたが、自分に課した使命「国を代表して五輪の舞台に立ち、その後も長く活躍し続ける」に変わりはない。