【Google電子図書館】アメリカとヨーロッパ連合の戦い!



Google創設者

" Google Library "

今新たな形になって生まれようとしている図書館!

上から下まで本に囲まれたあの静かな空間にいるだけで、人間が今まで蓄積してきた「知」を吸収できるような気がする図書館の雰囲気。―― 特に大英図書館であればなおさら…。

    
     Google Libraryイメージ図

翻訳者にとって図書館はまさにアイディアの宝庫。難しい原文や複雑な構造も図書館の専門辞書で探せばすぐに解決するし、社会的・文化的背景が必要な原文であればなおさら図書館で実地調査を行う。そんな図書館が今新たな形になって生まれようとしている。『 Google Library 』 である。

Google は昨年12月に電子図書館計画を発表した。半年経過した現在でも著作権やプライバシー問題、さらに出版業界からの反発もあり論争は続いている。Google は現在、 1 時間に 600 から 1200 ページの速さで書籍のスキャンを行ってはデータベースを増やしているという。そんなアメリカ Google の電子図書館計画に対するフランスの反応を紹介する。
Google の電子図書館計画は、今後 5、6 年のうちにアメリカのハーバード、スタンフォード、ミシガン、オックスフォード(ボディアン図書館)およびニューヨーク市立図書館(NYPL)の 5 つの図書館の蔵書すべてをデジタル化しオンラインで提供するというもの。利用者は無料で閲覧が可能となり、世界各地の研究者などは航空券代を払わずにいつでもどこでも研究が行えるようになる。しかしこうした Google のプロジェクトを、アメリカ文化支配の脅威と見るのがフランス国立図書館(BNF)。そもそもBNF と NYPL は 1999 年から共同デジタル・ライブラリー・プロジェクトについての話し合いが始まっていた。両図書館の蔵書すべてをデジタル化、1 つの検索システムを作ることで、蔵書数を増やし利用者の検索の効率を上げることを狙いとしたものだった。しかしこのプロジェクトの実行には時間がかかっていた。

そこへ突然“割り込んで”来たのが、Google チームだったというわけだ。Google は NYPD にアメリカ 5 大電子図書館計画を持ちかけ、NYPDは断るのはあまりにももったいないとアメリカ側に寝返ったという。

こんなアメリカからの脅威にフランスを含むヨーロッパ側も負けてはいない。BNF 館長で『Google のヨーロッパへの挑戦状:奇襲攻撃の理由(原題:Quand Google defie l’Europe, Plaidoyer pour un sursaut)』の著者でもあるジャン・ノエル・ジャンヌニは反撃を見せた。彼によれば、そもそも 5 年という短い時間で 5 大図書館のデジタル化を行うことは難しいという。



Google は常にその作品のスキャンの速さを誇りにしているが、電子図書館とは作品をスキャンしただけでなく、分類・書籍データなどの任務などを行わないと意味がない、と Google 電子図書館計画の実効性そのものを批判。さらに、Google のやり方では書籍それぞれの状態を考慮していないことも指摘した。書籍の老朽化のほか、研究者を含めた利用者にとっての実際の書籍の価値を考慮しないと電子図書館の意義はないのである。もともとの図書館構造があるからこそ電子図書館が成り立つのであり、インターネットの Web ページのようにただ機械が検索・分類して終わるような仕事ではない、と批判した。

一方の Google は今年 3 月のパリ・ブックフェアーでもその電子図書館計画の存在をフランス出版社に見せしめた。フランスの各出版社を回り、アメリカ 5 大図書館に所蔵されている作品の著作権などについて理解を求めたという。『 図書館王・Google 』と大きく取り上げた仏リベラシオン紙によれば、Google は出版社に対し、利用者へ無料で作品を提供できるとともに、同時に広告収入を得られることを前面に押し出しアプローチを行った。もちろんその広告収入とは“King Lear”と検索したときに“Burger King”の宣伝が出るような“商業広告”ではなく、King Lear にふさわしい文化商品の宣伝となる“知的広告”である。



    世界各国の有名図書館の蔵書数を示すイラスト

仏・文化情報誌テレラマによると、その約 1 ヶ月後の 4 月 27 日、ヨーロッパ 19 の図書館館長が集まりこうした Google 電子図書館計画参入への議論が行われた。こうして 5 月 3 日にフランス、ポーランド、ドイツ、イタリア、スペイン、ハンガリーの 6 ヶ国による共同電子図書館の計画が発表されることになった。電子図書館設立に向けて、ヨーロッパは広告収入などに頼らず従来の非商業的図書館を目指すことになったようだ。 アメリカとヨーロッパの電子図書館に対する両者の動きは異なるアプローチを取りながらも同じ目標へと一歩一歩進んでいる。それは知の探究という文化的動物・人間ならではのものなのかもしれない。いずれにしても私たち翻訳者にとっては嬉しいニュースである。こうした 2 つの大きな流れの中で、日本や中国を含めたアジアはどのような立場をとっていくのだろうか。今後を楽しみにしたい 。

フランス出版事情レポーター  玉置祐子 (フランス在住翻訳者)

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