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出版翻訳の舞台裏Column

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オーディション/Job Shop入賞者の声

外山次郎(第541回オーディション作品入賞者)

第541回 オーディション 作品入賞

訳書名 『いま哲学に何ができるのか?』
訳書出版社 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン


入賞者の声

 出版翻訳という仕事を意識したのは、半年かけて短篇ミステリーを訳す通信講座に申し込んだのがきっかけです。田中小実昌訳のカーター・ブラウンが大好きだったので、これなら愉しく勉強ができそうだという軽い気持ちからでした。当時は翻訳の奥の深さがわからず、訳文はいつも真っ赤に添削されて返ってきましたが、ひとつでも良い訳文があると講評の中で取り上げていただき、それが嬉しくて翻訳が一気に好きになりました。10年以上も前の話ですが、その講座がわたしの原点です。

 最近はリーディングや下訳の仕事をしながらコンテストやオーディションへの挑戦を続けています。今回、思いがけなく合格通知をいただいた時は本当に嬉しかったです。ただ、正直言ってそれほど哲学に詳しいわけではなく、体系的知識が乏しいことから不安もありました。いざ訳し出してみると、スケジュール管理がいかに大変かを痛感しました。また、一般向けの書籍とはいえ、難解な文章が多く、ネットでもヒットしない表現も頻繁に出てきて検索作業にも時間を取られました。なかなかスケジュール通りに進まず、家で煮詰まるとスタバで閉店ぎりぎりまで粘って原稿と格闘する毎日でした。なんとか訳了できたのはコーディネーターの方のおかげです。最後まで叱咤激励と助言をいただき、感謝しております。

 翻訳者に開かれた門戸が狭いことは承知しています。それでも翻訳の仕事に魅せられた仲間はまわりに大勢います。今回、チャンスをいただけたことに感謝しつつ、これからも夢をあきらめず、できればいつかフィクションを訳せたらと思っています。

村松静枝(第540回オーディション作品入賞者)

第540回 オーディション 作品入賞

訳書名 『The WINE ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド』
訳書出版社 株式会社日本文芸


入賞者の声

「わあ、こんな本を訳したい」フェイスブックの画面に現れた色鮮やかなグラフにみとれたときが、本書との出会いでした。ワインが大好きで、関連書籍も愛読していたため、ワインに関する情報はしばしば閲覧していたのです。その後トランネットのオーディション課題として本書が登場した際は「この本は絶対に自分が訳す」という、執念にも似た感情につきうごかされて課題を訳し、晴れて翻訳者に選出いただき、天にも昇る気持ちでした。
訳し始めると、意外な名産地や未知のブドウ品種が次々と登場し、調べ物をしていて心が躍り、飲みたいワインリストは増えるばかり。いっぽう、ワイン独特の香りや味わいを表す用語の訳出、複雑な伝統製法や国ごとに異なる原産地呼称制度の紹介部分にはひじょうに苦労し、数行を訳すのに数時間かかることもありました。
訳すうえでは、私自身も含めた「ワインが好きだけど深い知識はなく、ちょっと勉強してみたい」という読者のみなさんにすんなりと親しんでもらえるような表現を心がけたつもりです。ワイングラスを横に、気軽にページをめくってもらえれば嬉しく思います。
IT関連の社内翻訳からスタートし、出版翻訳を志し通信講座を経て、首都圏での勉強会やセミナーに高速バスに乗って参加し、講師のご縁で3冊の訳書にめぐまれて以降、オーディションに応募したり、興味を惹かれた原書のレジュメを作成して出版社へ提案をしては断られ、落ちこむ日々を過ごしていた自分が、趣味の分野の本を出版翻訳できたことは、今でも奇跡のようです。2カ月の翻訳期間には、仕事がはかどらずあせることもありましたが、訳文を提出するたびに担当コーディネーターの方からあたたかい励ましのことばをいただき、再び奮起してパソコンに向かうことができました。現在、やはり飲料関連書の翻訳をさせていただいていますが、原著者がその飲みものに注ぐ愛情と好奇心をあますところなく、生きいきと再現したいと思いながら取り組んでおります。

白川部君江(第544回オーディション作品入賞者)

第544回 オーディション 作品入賞

訳書名 『リセット〜Google流最高の自分を引き出す5つの方法』
訳書出版社 株式会社あさ出版


入賞者の声

「きっちり足に合った靴さえあれば、どこまでも歩いて行けるはず」——イタリア文学者の須賀敦子さんのエッセイに、こんな書き出しがあります。在宅でIT翻訳を細々と続けてきたものの、どこか借り物の靴を履いているような……そろそろ私も、自分にぴったりの靴に出会えるかな——そう思ってトランネットのオーディションに応募しました。課題文を読んで、「これまでの経験が生かせそうな気がする」そう直感したからです。

 世界的なIT企業のグーグルが社会的・人道的な活動に積極的に取り組んでいることを知り、その理念や使命感がどこから来ているのか興味がありました。この本は、南インドの農村出身でグーグルのエバンジェリストに上り詰めた著者が、普段の生活にヨガや瞑想を採り入れ、マインドフルネスを実践する方法を説く「自己啓発本」なのですが、エッセイや紀行文として読むこともできます。例えば、幼かったころ、祖母の家で体験した伝統的な祈りの儀式を回想したり、異国の旅で感じたことを民族対立の歴史を踏まえて語ったりと、ドキュメンタリーの1シーンのように描かれているところが多いのも印象的です。こうした原著の魅力をどれだけ正確なイメージにして読者に届けられるだろうか?——そう自問しながら、下調べと言葉探しに明け暮れる日々でした。途中、何度も息切れしながら無事翻訳を終えることができたのも、良きアドバイスと励ましでゴールまで導いてくださった担当コーディネーターの方をはじめ、トランネットの皆様のおかげです。

 シリコンバレーでヨガを教え、自らインド音楽を奏で、トライアスロンやロッククライミングにチャレンジし、世界各地を旅し、ダライ・ラマ14世に会いに行く——そんな超人的な著者のバイタリティーに舌を巻き、人生がいくつあっても足りないくらいの仮想現実体験が楽しめました。それ以来、「不思議の国インド」への親近感が増したのは言うまでもありません。

木下栄子(第532回オーディション作品入賞者)

第532回 オーディション 作品入賞

訳書名 『サイコパスに学ぶ成功法則 あなたの内なるサイコパスを目覚めさせる方法』
訳書出版社 株式会社竹書房


入賞者の声

 私が翻訳という世界に入るきっかけは、洋楽への憧れだったと思います。日本の歌謡曲も好きでしたが、とにかく英語の歌ってなんてカッコイイんだろうと夢中になりました。好きな曲は口ずさみたい、意味を知りたい。そんな思いから辞書を片手に終わりなき悪戦苦闘が始まったのです。
 翻訳会社に勤務し、翻訳コーディネーター、チェッカーを経て、今はフリーで主に実務翻訳、映像翻訳の仕事をしています。映像翻訳では、趣味であるサッカーやスポーツ、バレエの仕事を回していただくこともあります。好きな分野ができる機会はそう多くはないのですが、その分やはり自然とボルテージは上がります。ときにこんな体験ができるのは、翻訳という仕事の役得ではないかと思います。
 しかし翻訳の仕事は楽しいことばかりではありません。なじみの薄い分野で四苦八苦したり、膨大な調べ物があったり、納期の制約もあります。でも苦労がある一方で、意外な出会いから世界が広がることもあります。今回の出版翻訳は、まさにそんな出来事でした。
 応募しようと思ったのは、私の大好きなミュージシャンやサッカーチームゆかりの地、イギリスの心理学者と元特殊部隊の兵士によるサイコパスについての本だったからです。そして初めてオーディションに合格しました。とても嬉しいと同時に不安でしたが、それでも訳し上げられたのはコーディネーターの方、営業の方のおかげです。
 この本は「“よい”サイコパスになって人生で成功する」ための実践の書です。私も訳しながら自分に足りない部分を痛感し、「“よい”サイコパスを目指そう!」と励みつつ作業を続けました。本の冒頭に自分のサイコパス度が分かる診断テストがあるのですが、私は最低の「低い」でした。もう少し頑張りたいところです。
 翻訳での悪戦苦闘にも終わりはありません。それでも、ときに出会う素材や人々との“トキメキ”を大切にして、地道に続けていきたいと思っています。

岩井木綿子(第118回英語Job Shop入賞者)

第118回 Job Shop 作品入賞

訳書名 『自分の音で奏でよう! ベルリン・フィルのホルン奏者が語る異端のアンチ・メソッド演奏論』
訳書出版社 株式会社ヤマハミュージックメディア


入賞者の声

 今回、いくつか初めての経験をしました。まず、リーディングや下訳も含め音楽関連の本は初めてでした。ずっと吹奏楽にどっぷりだった私にとってはまさにホームグラウンド。しかも対象読者はプロを目指すレベルのホルン奏者なので、専門用語の説明は不要。普段のように周辺知識を調べ倒して業界特有の表現を確認し、専門家が違和感を覚えず一般人にも意味が伝わるぎりぎりの狭間を狙って言葉選びに悩む必要もなし。ただ、買ったはいいが何を言っているかよくわからず我が家の書棚に眠る教則本のようにしてはいけないと思いました。体の状態や鳴る音色が具体的に伝わり、著者の意図通り読者が実践できるように表現を練りました。呼吸法、口や手の動きなど自分で試しながら訳していたので、ちょっと変な人に見えたかもしれません。
 もう一つの初めては、著者や監修の方と直接お話ができたことです。出版記念のトークショーにお誘いを受けて参加しました。楽屋裏で監修の中島先生から音階表示法の国ごとの違いについて教えていただいたり、通訳の方とドイツ語のpolitikと英語のpoliticalのニュアンスの差について話し合ったり、ミーハー丸出しで著者のサインをいただいたり。挙げ句記念撮影まで。たいへん刺激的な体験でした。
 最後に少し怖いおまけ話を。参考文献の表記法を確認するために同じ出版社の本を借りて見ていた時のこと。トロンボーンの抜差管は唾を抜くのに使う、との説明が。確かに金管楽器の多くは抜差管を抜いて溜まった「唾(呼気の水蒸気が凝結したもの。楽器の中に唾を吐き入れることはないので念のため)」を捨てますが、トロンボーンでは滅多にそんなことをしません。親子三人トロンボーン経験者の我が家では大笑いとなりました。しかし。私自身知らないことを生半可な知識に基づきちゃっちゃと日本語にして同様のミスを犯していないか。そう考えて背筋がぞわぞわしてきたのでした。

バートン久美子(第527回オーディション作品入賞者)

第527回 オーディション 作品入賞

訳書名 『世界を動かすリーダーは何を学び、どう考え、何をしてきたのか?』
訳書出版社 株式会社日本実業出版社


入賞者の声

 ニュージーランドは日本と季節が逆で、冬は5月から9月にかけて。私が暮らすオークランドの冬は日本に比べると穏やかですが、とにかく雨が多い! 日本で16年暮らしたニュージーランド人の夫は「オークランドの冬に比べたら、日本の梅雨などrainy seasonとは呼べない」と言います。
 その夫との出会いが、私が翻訳の道へと進むきっかけとなりました。大学は英語科でしたが、卒業後は英語とは全く関係のない小さな会社に就職しました。それでも英語とはつながっていたいという気持ちで入った英会話サークルで出会ったのが、講師として来ていた今の夫です。彼が英会話教師の傍ら日英の翻訳をしていることに刺激されて翻訳学校の通信講座を始め、結婚後は、夫は日英、私は英日の実務翻訳を互いに助け合いながら作業する日々となりました。
 が、実は元々は出版翻訳が志望でした。出産や海外への引っ越しを経て、次第に仕事の量が減ってきたのを機に出版の勉強をしたいという思いが強くなり、トランネットに入会、オーディションにはなかなか合格できずにいたのですが、トランネットからリーディングやダイジェスト作成の仕事がいただけるようになりました。
 ダイジェストを作成した『View From the Top』が課題のオーディション案内をいただいたときは、不思議に「私は絶対このオーディションに合格する」と感じ、翻訳者に決まったときも、嬉しさとともに「やっぱり」という気持ちもあって、この『View From the Top』という本との縁を感じたものでした。
 1冊でいいから自分で本を訳したいという夢が、人生も半ばを過ぎてやっと叶いました。実務の仕事をしていたときや、子育てで忙しく翻訳から離れていたときは、もうこの夢が叶うことはないかもしれないと思ったりもしましたが、あきらめないでいればいつか夢は叶うものだとあらためて思います。
 死ぬまでにもう1冊訳したい、これが今の私の夢です。

瀬戸由美子(第116回英語Job Shop入賞者)

第116回 Job Shop 作品入賞

訳書名 『Mug Cakes マグケーキbook』
訳書出版社 株式会社日本文芸社


入賞者の声

「料理やお菓子、食にまつわる翻訳の仕事がしたい」と考え始めたのは20代の頃。当時私は製菓専門誌の編集者として会社に勤務していました。
 こう聞くと、「食の編集者」から「食の翻訳者」へ、自身の専門分野をずっと極めてきたかのように聞こえますが、実はまったくそうではありません。
 退社後、フリーランスで食関連の編集・ライター業を続けながら、翻訳事務所にも登録。コンピュータや電子機器関連の翻訳の仕事をいただくようになりました。正直、大学では文学を専攻していた私にとって、理系の分野は未知の世界。こうした案件をお引き受けするにあたっては不安も多く、少し躊躇しました。しかし、始めて見ると、今まで目にしたことのなかった理系の技術文書はとても新鮮で、得たものも大変多かったです。
 当初の希望通り、「料理やお菓子、食にまつわる翻訳の仕事」に携わるようになったのは、翻訳事務所を離れてからのこと。編集・ライター業でお付き合いのあった会社から依頼を受け、食の展示会のパンフレットや、海外向けに日本食を紹介する冊子などを訳すようになりました。やがて私の中では漠然と、次なる目標は食の書籍を一冊まるごと訳すこと……になっていったようです。
 そして昨年、Job Shopにて、本書「Mug Cakes(マグケーキbook)」を翻訳するお仕事に巡り合いました。まさに「自分が待ち望んでいたチャンスがとうとうやってきた!」と、少々興奮気味に訳文を仕上げて提出したのを覚えています。
 本来は、目標に向かって直進したほうがよいのかもしれません。でも、どんな仕事も必ず次の仕事に生きるということを、私は実感しました。今、目の前にある仕事に精一杯取り組み、積み重ねることで開けてくる道もあるのではないでしょうか。
 今後は食の分野の翻訳を極めていくことはもちろんですが、もし、チャンスをいただけるのなら、新しいジャンルにもどんどん挑戦していきたいと思っています。

吉原育子(第66回韓国語Job Shop入賞者)

第66回 Job Shop 作品入賞

訳書名 『つらいから青春だ』
訳書出版社 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン


入賞者の声

 まっさらな状態で語学留学した当初から、もともと読むことや書くことが好きだった私は、自然と、興味があった音楽雑誌や本などをせっせと趣味で翻訳しはじめました。帰国後、少しずつ翻訳の仕事をするようになり、やがて「本の翻訳がしたい!」という無謀な望みがむくむくとわいてきました。とはいえ、韓国語の翻訳、しかも出版翻訳などほとんど需要がなかった時代。それでも韓流ブームのおかげもあって、トランネットに登録すると、次第にリーディングや雑誌の翻訳などのお仕事をいただくようになり、以来、本当にたくさんの案件でお世話になってきました。
 このJob Shopの原書は、当時、驚異的な売れ行きで社会現象にまでなった本で、私も一読者としてとても心を動かされ、ぜひやりたいと願った本でしたが、期せずして訳者に選ばれたときは、嬉しかったと同時に、同じくらい不安になりました。思い入れが強い本であるほど、気負ってしまうせいか、逆に難しくなってしまうというのは、多くの翻訳者が実感するところではないかと思います。いい訳で届けたい、という思いに自分の実力がついていかず、うちひしがれることのほうが実際は多かった気がします。
 納期は2カ月、じつはこの時期、まるで売れっ子翻訳者のごとく同時進行していた本が何冊もあり、今ではどう進めたのか不思議でなりませんが、コーディネーターのかたのちょっとした一言にずいぶんと励まされながら、安心して進めていったことをよく覚えています。
 著者の来日が決まって、マスコミの取材と講演イベントの通訳にも声をかけていただき、訳書の著者が来日した際には通訳をつとめたい、というひそかな夢まで叶いました。トランネットのお仕事では、そうした翻訳作業以外での貴重な経験も何度かさせていただき、感謝しています。
 一冊の本の世界に浸りきり、その世界を新たな言葉にかえて、伝えていく作業は、つらくも魅力的。地道に続けていきたいです。

神奈川夏子(フランス語Job Shop入賞者 第98回/第111回/第113回)

第98回 Job Shop 作品入賞

訳書名 『偉大なるダンサーたち ~パヴロワ、ニジンスキーからギエム、熊川への系譜~』
訳書出版社 株式会社ヤマハミュージックメディア


第111回 Job Shop 作品入賞

訳書名 『モードデザイナーの家』
訳書出版社 株式会社エクスナレッジ


第113回 Job Shop 作品入賞

訳書名 『フランス式整理術 モノ・コト・時間から自由になる』
訳書出版社 株式会社エクスナレッジ


入賞者の声

数十年前、バレエダンサーになる夢を故障のために絶たれてふてくされていた私を、父が風俗店の立ち並ぶ町へ連れて行き、家でふてくされているくらいなら今すぐ働き口を探せ、と言いました。職業に貴賤はありませんが、当時の私にとってあの界隈への就職は想像を絶するものでした。そこでなんとか大学に潜り込んでフランス語を学び、文学が面白くて仏文科の修士に進んだものの、パリに留学したら町の毒気にやられて学問を放り出し、適当に遊んだりバイトしたりして帰国。その後も、会社を転々とし、通訳を目指したり、まったく別分野の資格に手を出そうとしたり、数年単位でやっていることが変わるので何ひとつモノになりません。バレエで挫折してからは、なんとなくいつもあきらめの気分がありました。

それでもフランス語と英語だけは多少できたので、紹介されて実務翻訳を中心にほそぼそと続けてきました。そして数年前からトランネットのオーディションやJob Shopに参加し、何回か挑戦するなかでお声をかけていただきました。コーディネーターや営業の方々に励まされ助けていただきながら、数冊を訳すという根気の希薄な自分には信じられないような幸運に恵まれてきました。出版翻訳業はひとつの作品に打ち込むというやりがいがありますし、次の仕事があるかどうかわからないスリルも味わえます。

英文学者で翻訳家の伯父に初めての訳書を渡したとき、遅いデビューをした姪に彼はこう言いました。「小説は10代でも書けるが、翻訳は歳を重ねたほうがよい」。

無駄と回り道の多い人生でしたが、翻訳の仕事には無駄、いや経験が役立つのかもしれません。なにより、バレエダンサーの評伝を訳したことで、自分のなかのバレエがやっと成仏してくれました。

川岸史(第58回ドイツ語Job Shop入賞者)

第58回 Job Shop 作品入賞

訳書名 『人生最後の食事』
訳書出版社 株式会社シンコーミュージック・エンタテイメント


入賞者の声

 はじめての訳書となった『人生最後の食事』には、たくさんの思い出があります。まず課題文を訳しはじめた時点で「この本、面白い!絶対に私が訳したい!」と惚れこんでしまったこと。それから提出期限まで、何度も推敲したこと。実際に読者がこの文章を読んだらどんな感想を抱くか? 書籍として印刷されたらどんな風に見えるか? といったことを考え、何度も縦書き印刷をして字面を確認しました。
 その後、訳者に選出されてからは、こんなことを考えました。「原書はノンフィクションだけど、どこか小説のようでもある。それはきっと、登場する人々が死を前にしてさまざまな行動をとるからだ。愛する人のそばにいたがったり、遠ざけてしまったり。優しくしたり、愛を試すように意地悪したり。群像劇のように、いろんな姿が映し出されている。こういう、たとえば切ない場面ではきちんとその切なさが伝わるようにしたい。あたたかい場面や、ユーモアのある場面などでもそう。そのためには、何より言葉選びに気を配らなくては。意味を正確にとることはもちろん、原書の持つ抒情的な雰囲気がしっかり伝わるように」と。
 留学や旅行で何度かドイツを訪れたときの経験も役に立ちました。ドイツ人と一緒に料理をしたり、食について話し合ったりといった記憶があるため、本書にたびたび登場する調理シーンやキッチンの雰囲気が、くっきりと想像できたのです。
 刊行後、いくつかの新聞・週刊誌の書評でとりあげて頂いたことにも励まされました。良い内容だったという感想に「ちゃんと伝えることができたんだ」と手ごたえを感じたのです。
 私の本業は映像翻訳なのですが、思いきって出版翻訳の世界に飛びこんでみてよかったなと感じています。異なるジャンルの翻訳には、多くの発見と相互作用がありました。
 この仕事をつづけていて強く感じるのは、翻訳はサービス業だということ。読者/観客にホスピタリティを尽くすこと、それが今の私の歓びであり、信条となっています。

井ヶ田憲子(第89回イタリア語Job Shop入賞者)

第89回 Job Shop 作品入賞

訳書名 『くものオルガのゆめ』
訳書出版社 成美堂出版/大日本印刷株式会社


第89回 Job Shop 作品入賞

訳書名 『くものオルガとものぐさなおひさま』
訳書出版社 成美堂出版/大日本印刷株式会社


入賞者の声

 ある日のこと、2冊の絵本が送られてきました。訳文をお渡ししてから何のご連絡もいただかないまま数ヶ月経っていましたので、「私の訳文があまりにひどいので企画が没になってしまったのかしら」と諦めていた絵本です。鮮明な色彩の素敵な装丁の絵本に感激すると同時に、作者さんと読者となる子どもたち、そして出版に関わった方たちに申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。「あぁ、こんな訳文では子どもたちを物語世界に引き込めない」と。誤訳のない訳文で原作者の言葉を元のイメージのまま読者に伝えるのは難しいけれど必須。
 私にとって子ども時代の読書は心の糧でした。「岩波の子どもの本」シリーズの数々の絵本、「岩波おはなしの本」の民話や「岩波少年文庫」の児童文学、「ナルニア国物語」の7冊やアーサー・ランサムの『ツバメ号とアマゾン号』のシリーズなどに夢中になり、翻訳であることを意識せずに物語世界に誘われていました。訳文に邪魔されずに読書できたおかげで、世界には多様な民族・文化・宗教・自然があり長い歴史を経て今があるのだと、「勉強」することなく感じ取ることができました。
 やがて、中学で習い始めた英語以外の言語でも読書したいと思うようになりました。大学時代にはフランス語とドイツ語とラテン語、卒業してからイタリア語をそれぞれ少しずつかじったのですが、イタリア語を始めた頃にはフランス語を忘れかけ……。復習のためにと仏日翻訳の通信講座を始めて「趣味の翻訳」の勉強が始まりました。講座を終えてしばらくすると原書を読んでシノプシスを書くお仕事の依頼をいただくようになり、いつの間にかほんのちょっぴり翻訳と関わるようになっていました。
 次に何かを翻訳する機会があったら原文を書いた人にも読む人にも謝らずにすむ訳文を書きたい。オーディションとJob Shopの課題で翻訳力を磨かなければと思っているところです。

佐藤由樹子(第530回オーディション作品入賞者)

第530回 オーディション 作品入賞

訳書名 『プロモート・ユアセルフ 最強のキャリアをつくる働き方』
訳書出版社 株式会社KADOKAWA


入賞者の声

 結婚を機に十年ほど勤めていた会社を退職し、翻訳学校に通うようになりました。下訳の仕事がいただけるようになったころに子どもが生まれ、その後も勉強を続けながら一冊目の訳書を出させていただいたのですが、幼稚園に通う子どもを抱えての翻訳は想像以上の重労働。考えが甘かったと痛感するとともに、家でできる仕事なだけに、返って子どもに犠牲を強いることになるのだと知りました。当時もトランネットには登録していたのですが、最終選考まで残ったものの本採用に至らず、いったん勉強に集中しようと決めて退会しました。
 今回は、子どもが小学校に通うようになり、生活に余裕ができたことを受けての再挑戦。改めてトランネットに登録しましたが、過去の経験もあり、厳しいオーディションだと覚悟して臨みました。それだけに、最初の挑戦で採用していただけたときは、驚くとともに、勉強を続けてきたことが力になったのだと実感できました。
 毎日のノルマを決め、時には夜遅くまで「残業」する日々でしたが、久しぶりに一冊の本を翻訳する充実感は何物にも代えがたい喜び。何より、コーディネーターの方のサポートが心強く、ともすると孤独になりがちな仕事を楽しく進めることができました。旬の情報がたっぷり詰まった本なだけに調べ物には苦労しましたが、新しい発見がたくさんあり、自分の中の引き出しがまた一つ増えたように思います。今は、また違ったジャンルの本の翻訳をさせていただいていますが、どんなジャンルの本でも、原文の持つ味わいをそのまま日本語として読者に届けられることが翻訳者の仕事と思って取り組んでいます。

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