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原題 The Label: A Story for Families
著者 Caroline White
分野 自伝/子育て
出版社 Ivy Press
出版日 2016/12/29
ISBN 978-1782404606
本文 想像していたのとは違う子を産んだ母親は、次から次へとマニュアルになるだろう本を読み漁った。我が子は何者か、将来どうなるのか、何が起きてどう対処すべきか。しかし、読めば読むほど気分は沈み、重荷は増えるばかりだった。夫の「お母さんの君が自分の子どもを受け入れなかったら、まわりの人も受け入れてくれないだろう。この子が君のほうへ歩いてきて、膝をたたき『ねえ、ママ』と言う日を想像してごらん」という言葉も耳に入らない。

また1冊、本が送られてきた。包みについていたラベル(label)は風ではがれて飛んでいってしまい、本を開くと一文字も書いていない空白のページがあるばかり。怒り、疲れ切った母親は、すべての本を棚にしまった。しまわれた本は、いつしか埃をかぶり、その存在も忘れられていった。

母親は子どもと過ごしているうちに、自分も子どもも日々成長していることに気づくようになる。毎日新たな気づきに喜びを感じ、笑い、泣き、学校に行き、弟もできた。この子のおかげで自分の人生は想像しなかったほど豊かになった、と母親は思う。子どもは自分の太陽で、将来に希望ももてた。そして、息子はいつしか一人前の大人になり、母親のもとを離れていった。

ある日、かつてしまいこんだラベルのない本を引っ張り出してみると、それはもはや白紙ではなく、写真やチケット、お絵かき、切り抜きなど、子どもと過ごした素晴らしい思い出が詰まった分厚い本になっていた。この本こそが母親にとって一番大切な本になった。赤ちゃんが生まれたときに欲しかったのは、こんな本だったのだ。

ダウン症の長男をもつ著者の、自身の体験に基づく言葉には重みがある。生まれながらに分類されてレッテル(label)を貼られてしまった子どもと、我が子に対する相反する感情――あふれる愛情と圧倒的な恐怖、罪悪感、不安――に苦しむ母親の物語は、多くの人を勇気付けるだろう。