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加藤智子(第630回・第649回オーディション入賞者)

第630回 オーディション 作品入賞

訳書名 『なぜ心はこんなに脆いのか 不安や抑うつの進化心理学』
訳書出版社 株式会社草思社


第649回 オーディション 作品入賞

訳書名 『ジョン・レノン 最後の3日間』
訳書出版社 株式会社祥伝社


翻訳ストーリー

 中学生のころ、学校で年に一日だけ洋書の出店が開かれていました。生徒玄関の隅の方に置かれた長机の上に並ぶのは、『くまのパディントン』や『秘密の花園』など、小さいころから何度も繰り返し読んできた、見慣れた本たちでした。ただしもちろん、言語は英語です。自分がいつも呼吸するように読んでいる本は、誰かが訳してくれたものだったんだ、という事実を初めて本当に理解して、目の前がパッと開けるような気がしました。あの時の衝撃と興奮は、今でも鮮やかに覚えています。
 大学卒業後にいったん就職した後、翻訳への興味を抑えきれずに、英国に留学して文芸翻訳の修士課程で学び、その数年後にはより実務的な技術を身につけるために米国の大学院で翻訳・通訳の訓練を受けました。文芸と実務の両方を学んだことで、原作の世界観をできるだけ再現するという基本的な姿勢だけでなく、リサーチやスタイルガイド順守の徹底、客観的な視点をもつことの重要性などを知ることができたように感じます。
 幸運にも、トランネットでは分野もトーンも全く異なる2冊の本を訳す機会をいただきました。1冊目の『なぜ心はこんなに脆いのか』は、進化精神医学に関する専門的な部分はもちろん、著者の熱い情熱も伝わる訳文を目指しました。2冊目の『ジョン・レノン 最後の3日間』は、大好きなジョンの伝記ということで、お話をいただいたときは本気で「夢かもしれない」と思いました。原文から立ち上がるリバプールやニューヨークの街並みや、登場人物たちのおしゃべりを、できるだけそのまま写しとりたいと願いながら訳しました。どちらも長丁場で、最後まで走り通せるのか不安もありましたが、トランネット担当者さまの温かい支援のおかげでゴールに辿り着くことができました。
 今後はノンフィクションに加えて、ヤングアダルトなど若い人たちに本の素晴らしさを知ってもらえるような作品にもぜひ挑戦したいと思っています。

服部こまこ

訳書名 『Procreateビギナーズガイド iPadで描くキャラクターイラスト』
訳書出版社 株式会社ホビージャパン


訳書名 『Procreateビギナーズガイド iPadではじめるデジタルペイント』
訳書出版社 株式会社ホビージャパン


翻訳ストーリー

 子供の頃から『不思議の国のアリス』などの海外のお話が好きで、中高生になるとおこづかいを貯めて書店で原書を探すようになりました。あるとき、外国絵本の専門店で、幻想的なイラストの大型本に心を奪われました。それは、世界各地の神話や伝説に登場する架空のキャラクターをアルファベット順に解説した辞典でした。どうしても欲しくなりましたが、洋書は高額です。日本語版があるかどうかお店の人に尋ねると、日本ではまだ出版されていないことがわかりました。「それならいつか自分で訳してみたい!」。初めてそう思い、奮発してその本を購入しました。翻訳という新たな目標ができて、ワクワクしたことを覚えています。
 その後、アートや世界史への関心が高まり、進学して美術史を専攻しました。翻訳の初仕事は、先輩に紹介してもらった東南アジアの遺跡の写真集のキャプションです。部分的にでも自分の訳文が本という形になり感動しました。
 それから、いくつかの分野の職場で働きながら、業務の一環として社内資料やニュースレターを訳す一方で、書籍翻訳の夢も忘れられず、共訳プロジェクトに参加したりしました。
 転機になったのは東南アジアでの暮らしです。家庭の事情でシンガポールとマレーシアに8年間住みました。子育て中でもあり、家でできるライティングや翻訳の仕事をしながら、現地作家の面白い絵本を探したり、アジアらしい風物を描いたりするようになりました。
 帰国後、持ち帰った絵本の一冊をある出版社に持ち込んだところ、翻訳して出版できることになりました。またトランネットで東南アジア文芸の翻訳オーディションがあることを知り、すぐに入会して応募しました。最終候補には残ったものの選ばれませんでしたが、後に『Procreateビギナーズガイド』のお仕事につながりました! 当時、ちょうどProcreate(お絵描きアプリ)を自分でも使い始めたところでしたので、翻訳しながらデジタルイラストの基礎を学ぶことができて大変幸運だったと思います。今後も翻訳を通して世界を広げていきたいです。

葉山亜由美(第648回オーディション入賞者)

第648回 オーディション 作品入賞

訳書名 『未知なる冒険の書 自然に学び、地球で学ぶ336の知恵』
訳書出版社 株式会社トゥーヴァージンズ


翻訳ストーリー

 小学生のときに、親の勧めでなんとなく通い始めた英会話教室で、初めて目にする大柄の外国人に驚き、字も発音も、日本語とまったく違う言葉に「なにこれ……! 面白い!」と思ったのを覚えています。
 それ以来、日本語と英語の違いが面白くてしかたなく、社会人になってからも勉強を続けました。もともと本を読むのが好きだったので、洋書も少しずつ読むようになりました。いくつかの仕事を経験したあと、何年間かブランクを経て、産業翻訳の仕事をする傍ら出版翻訳の仕事もしてみたいと思い、トランネットのオーディションを受けることにしました。何度か応募を重ねるうちに、リーディングのお仕事をいただけるようになり、一つ一つ丁寧に取り組みました。その後も応募を重ねましたが、何度か一次候補に選んでいただいたものの、なかなか最終訳者には至らず、焦りが募りました。このままずっと結果が出なかったらどうしよう、やはり出版翻訳を目指すなんて無理なんじゃないかと、何度も諦めそうになりました。
 そんな中、ふと、挑戦すること自体が楽しくなってきたのです。「チャレンジャーズハイ」という言葉があるのかどうかはわかりませんが、目標があって、それに向かっていること自体が幸せなことだと思えてきたのです。こうして余分な力が抜けた矢先、新しくオーディションの課題が送られてきました。その原文とイラストに一目惚れし、「訳したい!」と強く思ったのを覚えています。でも結果にこだわらず、自分がベストだと思う訳文を送りました。それが、今回出させていただいた訳書につながりました。オーディションを受け始めてから、23回目のことでした。
 実際の翻訳作業はとても楽しくもあり大変でもありましたが、トランネットの皆さんの心強く、あたたかいお力添えのおかげで無事に完走することができました。訳者に選んでくださった出版社様にも、深く感謝しています。

青樹玲(第642回オーディション入賞者)

第643回 オーディション 作品入賞

訳書名 『ペットが死について知っていること 伴侶動物との別れをめぐる心の科学』
訳書出版社 株式会社草思社


翻訳ストーリー

 翻訳って楽しいなと感じたのは、大学時代のことでした。英米文学科で学んでいた当時は、文学でも雑誌記事でも、とにかく英語の原文を理解して日本語の文章として表現することが、ただ楽しいと感じていました。卒業後は海外小説、英語学習誌、英語教材書籍の編集や、デジタル英語教材の開発に携わりながら、翻訳の勉強を続けてきました。
 そうこうするうちに20年ほどが経ち、「いつの日か……老後を迎えるよりは少し前くらいに、翻訳者としてデビューできたら、人生がもっと楽しくなるだろうな」と思うようになりました。
 ちょうどその時、トランネットのオーディションでいわば「目が合った」のがデビュー作となった『Lost Companions』でした。動物への愛情にあふれる著者の詩的な文章に引き込まれ、いざ訳してみるとわくわくしてきて、同時になぜかどこか懐かしいような気持ちにもなりました。何度も推敲してから応募し、それだけでとても満足して、達成感を味わっていたように思います。後日、担当させていただくことが決まり、「これは大変なことになった、あの数枚の原稿の何倍だろう」と慌てふためいたことを覚えています。
 少し遠い日の目標として置いていたものが、急に目の前に来てくれた。普通列車を乗り継いで京都旅行に行こうとしていたら、京都のほうが来てくれた、くらいのインパクトでした(ちなみに関東在住です)。ですが、原書を大好きになっていたので、嬉しくて跳びはねる自分もいました。プロとして1冊すべてを訳すという体験は初めてで、不安な気持ちもありましたが、トランネットのきめ細やかで優しいサポートのおかげで無事、訳了することができました。これからも素晴らしい原書との出会いやご縁を大切にして、翻訳という、楽しくて、自分を成長させてくれるお仕事にじっくりと向き合っていきたいと思っています。

久木みほ(第166回Job Shop入賞者)


訳書名 『AWAY GAME(アウェイ・ゲーム)』
訳書出版社 株式会社アルク


翻訳ストーリー

 幼いころから本を読むのが好きで、毎月1冊ずつ買ってもらえる子ども向けの外国文学全集が何よりも楽しみでした。高校生になったころから海外ミステリーに夢中になってアガサ・クリスティーの作品を読みあさり、いつかは自分の訳書で作品を読んでもらいたいと思うようになりました。しかし、年齢とともにビジネスに関心がうつり、マーケターとして企業に勤務するようになると翻訳への関心もうすれていきました。
 そんな中、業務のために翻訳をする経験を重ねるうちに、「英語ができる」だけでは翻訳はできないことを痛感しました。表面的辞書的な理解にとどまらず真意をくみとる力も必要であり、さらに文化背景の違いや該当ジャンルに関連する知識の多寡など受け手を想定する配慮もなければ、本来伝えるべき内容は伝わりません。それは、メーカーが消費者に提供したいメリットをいかに理解や共感を得られる形で製品として体現し各種コミュニケーションで伝達するかというマーケティングと、驚くほど類似していました。
 そこで、マーケティングコンサルタントとして独立したのを機に、同質の思考プロセスを必要とする翻訳にも本格的に携わる決意をしました。実務翻訳を手がけるかたわら出版翻訳の学校で経験と知識を積み、トランネットほかの公募機会に挑戦し続け、2020年のJob Shopで『カスタマーサクセス・プロフェッショナル』の下訳のお仕事をいただき、続いて2021年の『アウェイ・ゲーム』で念願の「自分の訳書」を世に出すことができました。お声がけいただきましたトランネットの皆さまには、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
 現在までに関わらせていただいた書籍はいずれもビジネス書であり、それが自分の得意分野であるとも自任しています。今後は自分の強みをさらにブラッシュアップしつつ、翻訳に興味をいだく原点となったミステリーを翻訳する機会にも挑戦していきたいと考えています。

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