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別所里織(第393回オーディション作品入賞者)

第393回 オーディション 作品入賞

訳書名 『ミツバチ・バズの冒険 山の向こうに何がある?』
訳書出版社 株式会社PHP研究所/制作協力 株式会社PHPエディターズ・グループ


翻訳ストーリー

 学生時代は映画製作を志してアメリカに留学していたのですが、挫折し、翻訳でやっていこうと思い定めて帰国しました。
 手始めに、気に入ったアメリカ小説を一冊訳し、各出版社に持ち込んでみましたが、当然ボツ。当時は翻訳を甘く見ていて、学校など行かなくてもなんとかなるだろうとタカをくくっていたのです。しかしとんでもない! みなさんご存じのように、翻訳とは簡単に見えて難しく、奥深いもので、それで生計をたてるというのは予想以上に大変でした。(十数年たった今でも結構大変)
 その後は心を入れ替えて翻訳学校に通い、途中で映像翻訳の道に進路変更し、今は映画やドラマなどの字幕翻訳を中心に、お仕事をいただいています。 
 オーディションに応募したのは、いつもの字数制限の世界からの逃避願望もありましたし、出版翻訳への憧れがまだくすぶっていたというのもあったのでしょう。ある日、トランネットのサイトで「山の向こうに何がある?」の課題文と“大人のためのスピリチュアルな寓話”というキャッチコピーを目にした時、ふと思ったのです。「あ、これは私が訳す本だな」と。
 とはいえ、まだトランネットに入会もしていなかったし受かる自信もなかったので、入会金や応募料を払ってもボツになったらもったいない、とセコいことを考えて悩みましたが、結局締め切りの3日前に入会し、ぎりぎりで課題文を提出しました。
 最終選考に残ったと聞いてから結果が出るまでは、「もしかしたら」「いや、まさか」という気持ちのせめぎあいで、合格のメールをいただいたときは、なんだかキツネにつままれたような気持ちでした。応募訳にはミスもあったので、受かったのは、やはりこの本との縁だったと思います。
 持ち込みの経験からも、こちらから出版社にアプローチしなくてもチャンスに出会えるトランネットさんのシステムはとてもありがたいものです。また「これは」と思える作品があれば、挑戦していきたいです。

福井久美子(第399回オーディション作品入賞者)

第399回 オーディション 作品入賞

訳書名 「ジョージ・クレイソンの名著『バビロンの大金持ち』の教え」
訳書出版社 株式会社PHP研究所


翻訳ストーリー

 オーディションの合格者がよく体験談で語っているのと同じように、私が『バビロンの大金持ちの教え』のオーディションに応募したのも、直感がきっかけでした。
 実は私は何度もオーディションに落ちていて、このまま永久に受からないんじゃないか!? と思っていました。ところが今回は、メールの課題文を漫然と眺めていたときに、「あ、これ、行けるかもしれん」とビビビと来た
のです。それでダメもとで受けることにしました。
 ところが、もともと怠け者なこともあって、課題文をプリントしてホチキスで留めた途端に、課題を半分やり終えたような気になりました。そのまま課題文を放置して10日間ほどが経過…(汗)。あわやスルーしそうになりましたが、「行ける!」という強烈なインパクトが忘れられず、締め切り三日前にバタバタと課題に取りかかりました。
 課題文を読み終えて、翻訳に取り掛かろうとしたとき、またしても直感が働きました。タイトルの訳文が思い浮かんだのです。課題文の冒頭は「Let Rebellion Sweep You to Change」というタイトルで始まっていました。普通なら「何クソという気持ちをバネに変身しよう」(モデル訳文を引用)などと訳すところを、私の頭をよぎったのは「くやしいという思いがあなたを変える」という訳でした。これだと減点されるかな?と不安になりましたが、結果オーライだったのか(?)、無事に合格しました。
 それにしても、「この本訳したい!」とねじり鉢巻きをして、一週間かけて取り組んだオーディションにはあっさり落ちて、三日でやっつけたのに受かるなんて…、人生の皮肉ってやつでしょうか? 思えば、こちらが人生を選ぶよりも、人生が人を選ぶケースの方が多いのかもしれません。なので、オーディションに落ちても気にする必要はありません。逆に、課題文を見てビビビときたら、そのオーディションは受けた方がいいでしょう。おそらくあなたは選ばれています。

岡村桂(第394回オーディション作品入賞者)

第394回 オーディション 作品入賞

訳書名 ベンジャミン・フランクリンの名著 『富への道』の教え
訳書出版社 株式会社PHP研究所


翻訳ストーリー

 日本人にはなじみが薄いかもしれませんが、アメリカ人なら誰でも知っているベンジャミン・フランクリン(彼の肖像が描かれているのは100ドル紙幣なのであまりお目にかかる機会はありませんが…)。そのフランクリンの名言をもとにして書かれた成功の指南書の翻訳のお話をいただいたとき、私はシカゴからニューヨーク郊外のグリニッジに引越したばかりで、多忙を極めていました。新しい土地での生活、なかなかはかどらない翻訳作業に、少しいらだちを感じ始めていました。
 そのとき、フランクリンのある言葉に目がとまりました。「仕事を追い、仕事に追われるな」――これはまさに、18世紀のフランクリンから私へのメッセージでは? そう考えた私は、翻訳作業を進めるのと並行して、フランクリンの自伝を読むことにしました。ただでさえ忙しいのに本を読む時間なんてあるかしら…という不安はありましたが、フランクリンの言葉だけでなく彼の生い立ちや信条を知りたいという強い気持ちから、「仕事を追う」ことにしたのです。
 フランクリンの言葉には、現代の私たちへのメッセージがたくさん盛り込まれていました。「早寝早起きは三文の徳」と説き、勤勉・節約・規律を勧めながらも、「勤勉な人は余暇を手に入れるが怠け者はこれを手にすることはできない」と、時間の上手な使い方をすでに18世紀半ばに警告していたのです!
 翻訳の仕事をするようになり、初めて1冊の本を1人で任されたのがちょうど10年前。それ以来、仕事に追われたり行き詰ったりしたこともありましたが、ここまで続けて来られたのは、周囲の方々のサポートがあったのはもちろんのこと、この仕事が大好きだったからだと思います。先月また引越しをしてたくさんの荷物に囲まれながらも、「仕事に追われるな」と呪文のように唱えて仕事を楽しんでいます。翻訳という仕事に新たな気持ちで向き合える1冊に出会えたことを、とても幸せに思っています。

瀧川隆子(第402回オーディション作品入賞者)

第402回 オーディション 作品入賞

訳書名 『時を超えた恋人』
訳書出版社 株式会社オークラ出版


翻訳ストーリー

 オーディションで訳者に選ばれた喜びにひたる間もなく、時間との闘いが始まった。
 ヒーローである中世の騎士に頼まれてヒロインがタイムスリップした先は十三世紀のスコットランドだった。生活習慣の違う場所で女心のわからないヒーロー、コナーとともに現代娘ケイトが活躍するこの物語はタイムトラベルの要素に妖精伝説をからませたストーリーがとても魅力的で、読みごたえのある冒険ロマンスとなっている。ユーモアもたっぷりな文章で本来ならば楽しみながら翻訳できる作品のはずなのに、時間的に余裕がなくて悪戦苦闘を強いられる結果となった。
 舞台が中世スコットランドなので、地名や固有名詞に出てくるスコットランド語の発音を調べるのに骨が折れたが、チェッカーさんに助けていただき、なんとか乗り越えた。中世の雰囲気がつたわるよう登場人物のせりふを時代劇のような言いまわしにするのが大変だったが、大河ドラマを思い出しながら、これまでの乱読で培ってきたボキャブラリーを駆使して挑戦した。
 最終段階で出版社の編集の方に細かくチェックしていただいたのがとても勉強になった。それまでまったく気づかずにいた自分の文章の癖を知ったのは、大きな収穫だったと思う。
 いま振り返ると、ヒロインのケイトと一緒に中世に迷い込み、冒険を楽しんできたようなスリルと緊張感に満ちた不思議な三カ月だった。お蔭さまでますます翻訳が好きになり、ますますロマンス小説への思いが強くなった。
 この気持ちを忘れずに、これからも日本語を大切にしながら丁寧な翻訳を心がけていきたいと思っている。

四方久美(第395回オーディション作品入賞者)

第395回 オーディション 作品入賞

訳書名 『ヒットマン デヴィッド・フォスター自伝』
訳書出版社 株式会社ブルース・インターアクションズ


翻訳ストーリー

わたしがカナダ人の音楽プロデューサー、デヴィッド・フォスターの自伝『ヒットマン』を訳すことになったのは、あるラジオ番組がきっかけでした。それはAORと呼ばれるアダルトなポップスを流す音楽番組だったのですが、そのDJをされていた方がデヴィッド・フォスターの大ファンだったのです。

トランネットで『ヒットマン』の課題を見た時、あのデヴィッド・フォスターの自伝だったら試しに受けてみようかなという軽い気持ちで応募したのですが、いざ合格となって原書のコピーが送られてくると、青くなってしまいました。なにしろ原書で200ページ、翻訳すると400ページに及ぶ長さでしたから。

でもトランネットの担当の方もきちんとスケジュールを組んで管理してくださいましたし、チェッカーの方にもずいぶん助けていただきましたから、第1章を訳したあたりからかなり安心して翻訳にも取り組めるようになりました。

ただ、やはり本を一冊まるごと訳すというのは大変でした。平日の朝、仕事に行く前に調べ物をして、仕事から帰ってくると夜中まで翻訳をして、朝から晩まで机にかじりついて、気がついたら一日じゅう靴をはかなかったなんてこともザラでした。

この本はノンフィクションなのですが、出だしからしてミステリー小説のようですし、一度読み始めたら止まらなくなるほど面白いエピソードが満載なんです。マイケル・ジャクソン、マドンナ、フランク・シナトラ、バーブラ・ストライサイドら大物スターたちの知られざる素顔が語られていますし、デヴィッド・フォスター自身のプライベートも赤裸々に書かれていますから、音楽ファンはもちろん、音楽にはあまり興味のない方でも十分楽しんでいただけると思います。

デヴィッド・フォスターは昨年の秋に来日しましたが、わたしも東京までコンサートを見に行ってきました。会場で自分の翻訳書が売られているのを見た時にはもう嬉しくてたまりませんでした。翻訳のきっかけを作ってくださったラジオのDJの方にも本をお送りしたら、番組の中でお礼を言ってくださって、これまた嬉しいオマケが付きました。

佐藤志緒(第390回オーディション作品入賞者)

第390回 オーディション 作品入賞

訳書名 『ため息は愛のはじまり 「華麗なる貴族」シリーズ第1弾』
訳書出版社 株式会社ぶんか社


翻訳ストーリー

私がトランネットに入会したのは、このオーディションがきっかけです。前からトランネットのシステムには興味があり、課題が出るたびチェックをしていたのですが、いつも「これは私にはムリ」とあきらめてしまっていました。でもこのときは課題文を見た瞬間、なぜか「私にもイケる!」と思ったのです。

当時私は数冊訳書を出していましたが、ほとんどがノンフィクション。フィクション、それもヒストリカル・ロマンスを訳すのは初めてでした(なぜ「イケる!」と思ったのかいまだに不思議です)。そのうえ、課題文の主人公は「摂政時代の英国にやってきたアメリカ人女性」。複雑な背景を踏まえ、文体、視点、訳語の選択に悩み抜き、期限ギリギリに課題の訳文を提出したときには精も根も尽き果てていました。

それでもこの課題に挑戦したのは、「フィクションもノンフィクションも訳せる翻訳者になりたい」という“果てしなき野望(?)”があったからです。ジャンルを問わずわかりやすい訳文を紡ぎ出す女性翻訳家は数多くいらっしゃいますが、特に昨年亡くなられた相原真理子さんは今でも私の憧れです。

結局合格したことにより、同じ出版社のロマンス小説を5冊も訳させていただけることになりました。またトランネットを通じてトライアルを受けたり、コーディネーターの方々のご指導を受けながら別のお仕事をするチャンスにも恵まれています。翻訳の先生に師事したわけでもなく、出版社に特別なコネがあるわけでもない私にとって、これは本当にありがたいことです。

思えばほぼ15年前、通信講座で勉強を始めた頃、「翻訳家になんて本当になれるの?」と幾度も不安に駆られていました。でも今、こうして自分の訳書を出せるようになったのは、あきらめなかったからだと思うのです。それゆえ、泣きたいほどヒドい点数(!)をとっても決してあきらめず、今後もトランネットのオーディションを受け続け、“果てしなき野望”に挑戦していきたいと考えています。

※上訳書6冊、共訳3冊など他にも訳書多数。

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