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原題 What Makes Your Brain Happy and Why You Should Do the Opposite
著者 David DiSalvo
ページ数 335
分野 脳、生物、心理、倫理、自己啓発
出版社 Rowman & Littlefield
出版日 2018/02/13
ISBN 978-1633883499
本文  空港を歩いていたとしよう。売店で買った雑誌が420円だった。前を歩く男のTシャツの背中に420のナンバーが。ふと見た時計の時間が4時20分。偶然の一致に驚いてしまう。搭乗予定の飛行機が420便なのだ。もしかしたら何かの前兆なのではないか。よい前兆か、悪い前兆か。飛行機に乗るのはやめたほうがいいのか…?思いはぐるぐる巡ってしまう。こんな思いをしたことはないだろうか。

 筆者はこう説明する。経験、シンボル、イメージ、アイデアを結びつけようとする衝動は脳の重要な働きで、進化の過程で身の回りの環境を認識し生き延びていくために必要なプロセスである。逆に何の意味もない所からも何かを生み出そうとしてしまい、それは自分の力で止めることはできない。

 様々な状況下で脳はロスを回避し、危険を減少させ、害を防ぐことを最優先に考え、本来あるべき状態に回帰しようと働く傾向がある。このことを筆者は”Happy Brain”と呼んでいる。しかしこの傾向は時により度を超えて働くことがあり、そのために人間の思考や行動に、プラスよりもマイナスの影響を与えてしまうことがある。
 
本書では進化心理学、社会心理学、認知科学、神経学、さらにはマーケティングや経済学まで駆使し、今日の先端の科学者のインタビューも交えながら、脳の弱点を探り出し啓発的な行動に意識を向けるための洞察を引き出している。究極のところこの研究はそのものずばりの答えを披露するものではないが、進化した脳をよい方向に活用し、満ち足りた生活を送るための実践的なヒントを読者に与えてくれる。