ブックレビュー
| 原題 | Treasures on Earth |
|---|---|
| 著者 | Jeremy Harte (Author) |
| ページ数 | 296 |
| 分野 | 歴史、地理、民俗学、文化人類学、文学、宗教 |
| 出版社 | Reaktion Books |
| 出版日 | 2026/04/01 |
| ISBN | 978-1836391876 |
| 本文 | イギリス各地には、竜や悪魔、呪術師が登場する秘宝にまつわる伝説、とりわけ埋蔵された宝をめぐる物語が数多く伝わっている。本書は、そうした埋蔵伝説を数百件にわたり初めて体系的にまとめた書であり、イギリス民俗学者による長年の調査と洞察が詰まった一冊である。著者は、景観や土地と伝説の関係について精通しており、伝説が生まれた背景を丹念に読み解きながら、人々がなぜこうした伝説に惹きつけられるのかを探っていく。人間は、秘宝そのものよりも、秘宝が隠され、見つかるまでの「物語」にこそ強く惹きつけられるーーこれが著者の主張の核心である。また、伝説に登場する人物像や物語の構造が、時代によりどのように変化してきたかにも目を向ける。さらに、秘宝を得ることは権力を得ることを意味し、富や秘宝は、貧困や戦争を乗り越えるための「希望」を象徴してきたという点も論じている。そして、これらの主張を膨大な資料をもとに解き明かしていく。数々の伝説とエピソードを通して、「欲望、恐怖、希望につき動かされる人間とは何か」を、読者が著者とともに考える場を提供してくれる。 本書は、民話・考古学・文化史を織り交ぜながら、埋蔵伝説が超自然的存在とともにどのように変容し、社会の価値観・恐怖・願望を映し出してきたのかを読み解き、歴史、地理、そして人間の想像力がどのように伝説を作り上げたかを丁寧に分析している。綿密な研究と魅力的な語り口が両立していて、イギリスの歴史・民俗学・考古学・文学の専門家はもちろん、ファンタジーや歴史に親しむ一般読者にも開かれた一冊だ。 |