ブックレビュー
| 原題 | Out of This World |
|---|---|
| 著者 | Peter Bond (Author) |
| ページ数 | 376 |
| 分野 | ポピュラーサイエンス、宇宙、科学 |
| 出版社 | Reaktion Books |
| 出版日 | 2026/06/15 |
| ISBN | 978-1836391999 |
| 本文 | 人類が初めて宇宙へ到達してから、半世紀以上が過ぎた。宇宙への旅はどこか身近になったように思えるが、その実態は今なお、人類の試みの中で最も過酷で危険な挑戦の一つである。本書は、宇宙飛行士が極限の世界でどのように生活し、任務に挑み、生還するのかを、地に足の着いた視点から描き出すとともに、宇宙進出の歴史を幅広く詳細にたどった科学ノンフィクションである。 宇宙飛行士になるためには、どのような資質が求められ、どのような訓練を受けるのか。本書では、数千人から絞り込まれる厳しい選考や過酷な訓練はもちろん、任務への配属を待つ長い「待機期間」における心理的葛藤まで丁寧に追っていく。また、無重力空間での食事や睡眠、運動、衛生管理といった宇宙飛行士の日常生活や、長期滞在がもたらす身体的変調や閉鎖空間でのストレスに至るまで、宇宙で暮らすことを具体的に示している。 宇宙での日常生活では、最大の娯楽である食事を、どうにか楽しもうと工夫しながらも、うまくいかないことも少なくない。加えて、地球に帰還してからも、無重力下で身についた「物を空中に置く感覚」が抜けず、しばらくはうっかり物を床に落としてしまうこともある。本書には、こうした宇宙飛行士ならではの試行錯誤の日々の中での人間味あふれるエピソードも豊富に綴られている。 さらに、国際宇宙ステーション(ISS)で行われる科学実験や、アポロ計画から現代の月探査計画(アルテミス計画)へと至る人類の挑戦を描く。同時に、宇宙飛行に伴う過去の悲劇的な事故や犠牲にも触れ、宇宙開発が常に大きな危険と隣り合わせで進められてきた現実を明確に示す。 著者が、長年の信頼関係で培った数多くの宇宙飛行士たちから得た貴重な証言は、各ミッションの背後にある規律、忍耐、そして不屈の精神を克明に描き出している。100点以上の写真を交えて明かされる地球を超えた生活は、単なる驚異の偉業にとどまらず、極限状態でのチームワークや、静かな忍耐力の重要性を教えてくれる。宇宙ファンはもちろん、現代のビジネスパーソンが求める「危機管理」や「レジリエンス(折れない心)」の指標としても深く刺さる、読み応えのあるノンフィクションである。 |