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原題 Ch’ing, a Chinese Book of Love
著者 John Minford
ページ数 416
分野 文学、フィクション全般、詩
出版社 Reaktion Books
出版日 2026/07/01
ISBN 978-1836391944
本文 中国の古典文学といえば、仁・義・礼・智・信など儒教の堅苦しいイメージを思い浮かべるかもしれない。しかし、古代から現代までの中国文学を紐解くと、中国人は紛れもなく「情」に溢れている。
愛する者への「情」を、ときに率直に、ときに密かに、ときに比喩的に、ときに具体的に表現し、漢詩や文芸作品にその熱い想いを託してきた。

「情」というフィルターを通して中国の古典文学を読むと、当時の人々のたぎる想いが見えてくる。そして、その背景には中国独自の思想も横たわっている。それこそが道教の根幹思想「道(タオ)」である。男性を陽、女性を陰とし、陽と陰の融合こそが万物の調和を保つという考え方は、中国文学における「情」の表現とも深く結びついている。

紀元前、儒教の筆頭経典『易経』はすでに男女の愛を語り、『老子道徳経』も愛の女神を高らかに詠っている。
3~6世紀には、皇帝から大儒まで愛を表すアトリビュートを巧みに用い、繊細にして華麗な六朝文学の世界が花開く。
7~9世紀の唐王朝では、詩仙、李白が琴をモチーフに詩句で華麗なメロディーを奏で、伝奇小説『遊仙窟』は、男女の大胆な官能シーンを描写した。
10~13世紀の宋王朝には、蘇軾をはじめとする文人たちが、当時隆盛するメロディーに乗せた「詞」を発展させ、千年前の華やかな宴の様子を現代に伝えている。
14~17世紀の明王朝では歌劇が最盛期を迎えた。そのシナリオを見ると、切ない男女の恋を緻密な描写で華麗に織りなす作品もあれば、きわどい性描写のものもある。名作官能小説『金瓶梅』もこの時代の作品であり、濃密な性描写の艶美で幻想的なその世界観は、現代中国の小説や映画にも影響を与えている。
17~19世紀の清王朝では『聊斎志異』の怪しの世界観で、男女の愛憎劇を克明に描き出す。中国文学の最高峰と名高い『紅楼夢』では、男女の悲恋の切なさや情熱をみごとに表現された。
近代以降も、伝統的な「情」の発露は受け継がれ、西洋文学の影響も受けながら独自の境地を切り開いていく。

本書は、「情」を描写する中国文学を紹介するだけにとどまらない。後半では、明王朝期の房中術もイラスト付きで紹介する。
性に関する手順や姿勢を図解しているが、性行為を単なる欲望の発散ではなく、陽と陰の融合により不老長寿を得るという「道」の実践として捉えている。
古代から現代まで、中国の数千年にわたる歴史の中で紡がれてきた激情の表現を一望できる一冊だ。