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原題 Volle Drehzahl: Mit Haltung an die Spitze
著者 Uwe Hück
分野 自伝
出版社 Campus
出版日 2012/9/4
ISBN 978-3593397061
本文 ポルシェの経営トップ陣に名を連ねるウーヴェ・ヒュックの初の自伝。世界的自動車メーカーを牽引する彼には、知られざる激動の半生があった。自分にはチャンスがないと思っているすべての子どもたちに向けた、人生を切り開くためのメッセージ。

ヒュックは自分の生年月日すら知らない。物心ついたときには両親がおらず、児童養護施設で育った。環境に馴染めず、幼い頃すでに自殺を考えたこともあったという。学校に入ると、知識が力になることに気づき勉強に没頭するが、タイボクシングの世界的選手に才能を見込まれたことからプロボクサーをめざし、ついにはヨーロッパチャンピオンに輝く。

塗装工としてポルシェに入社してからは、めきめきと頭角を現し、わずか2年で労働組合の代表に選出される。社内の労働環境改善に積極的に取り組む過程が語られる中で、土曜日には社長夫人が差し入れを持って現れるといったポルシェの内部が垣間見られるのも面白い。

10代までにどん底と栄光を味わってきた彼の言葉には深みと重みがあるが、子どもを対象に書かれていることもあり、その文章は常に読者に寄り添っていて共感しやすい。今も若者にタイボクシングの指導を続けているバイタリティあふれる生き方から、人生に無駄なことは何一つないと実感させてくれる良書である。