ブックレビュー ブックレビュー

原題 Il lancio del nano
著者 Armando Massarenti
ページ数 197ページ
分野 ノンフィクション(哲学・倫理)
出版社 Guanda
出版日 2006/1/1
ISBN 978-8882469504
本文 できるだけ遠くへ小人を投げることを目的とした競技がある。この競技のスター、「巨人」の愛称で知られるレニーは、9メートル以上の記録を出し、本人も大満足、観客も大喜びだった。

さて、この競技は、人間の尊厳を傷つけるとして禁止すべきだろうか? それとも、小人には小人の「投げられる権利」を守る理由があるのだろうか? 投げられるとき、彼らはどう思っているのだろう? 「人権」を定義し、それを守ることは、思っているよりずっと難しいことだ。

著者は、「人生の意味とは?」といった哲学的問いに対する答えを見つけだすため、自由と道徳、真実と懐疑論、知恵と自己吟ヤといったよく議論される複雑な哲学的テーマのいくつかを、日常の証拠に当てはめ、判断の自主性をもって注視しつつ、それらの矛盾やパラドックスを前にしてひるむことなく追求していく。

たとえば、オーストラリア人が好む「小人投げ」を前にして、どういう態度をとればいいのか? 絶対的自由を主張するものが、「人間の尊厳」の名の下に、本当にこの競技の禁止を正当化できるのか? あるいは、究極の反独断的主張「知らないことを知る」を取り入れた場合、何が起こるか? 今日における真のニヒリスト、相対主義者、無神論者は誰か? 無神論者や不可知論者であることで不都合はあるか? 「哲学的に解釈する」とはどういう意味か? 道徳と宗教、どちらを優先するのか? 私たちは「生まれつき善人」か「生まれつき悪人」か? 私たちを本当に幸福にしてくれるものとは何か? 自分自身を汲ュことはできるのか? など、興味深い話題が並ぶ。

それぞれの問いに対する答えは、半ページから1ページ半でまとめられている。本書を読めば、まったくの違う視点から物事をとらえ、慣れきった思考回路を一新できるだろう。