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原題 Experiencing David Bowie: A Listener's Companion
著者 Ian Chapman
分野 音楽
出版社 Rowman & Littlefield Publishers
出版日 2015/9/1
ISBN 978-1442237513
本文 デヴィッド・ボウイは20歳のアルバムデビューから死の直前まで、ときにはジギー・スターダストやシン・ホワイト・デュークといった別人格を演じながら、実に多彩な音楽を世に送り出した。本書は、ボウイのスタジオアルバム全28作のうち、遺作『ブラックスター』を除く27作について解説している。

著者はボウイを、「ポピュラー音楽の広いステージの上でさまざまな役割を演じる俳優」(「はじめに」より)と定義し、才能の泉から湧き出てきたものをそのまま伝える「純粋な存在」としてのロック歌手像の対極に位置づける。そのため本書は、音楽や歌詞の評論を超え、ジャケットから本人の装いに至るまでのビジュアル面を含めた、トータルなパフォーマンス分析に仕上がっており、耳で聴くだけではわかりにくいボウイ自身の心境や状況の変化も鮮明に描き出す。本書の解説の最後を飾る『ザ・ネクスト・デイ』(2013)では、曲の面でも歌詞の面でも決して丸くなることなく模索を続けていること、だからこそ今でも音楽シーンの最前線にいるのだということを教えてくれる。

ボウイの音楽を聴いたことがない人でも、彼の曲を聴きながら本書を読めば、音楽をだけでなく、その生き方にのめりこむようになるだろう。