ブックレビュー ブックレビュー

原題 Wie viele Sklaven halten Sie?:Über Globalisierung und Moral
著者 Evi Hartmann
分野 ビジネス/倫理
出版社 Campus Verlag
出版日 2016/2/18
ISBN 978-3593505435
本文 「あなたは何人奴隷をかかえている?」著者は読者にそう問いかける。冗談を言っているわけではない。洋服を着て、食事をし、車に乗って、スマートフォンを使う。そういう生活をするだけで、およそ60人の奴隷を働かせているのと同じことになるのだ。望むと望まざるとにかかわらず。

奴隷という言葉は前時代的な響きをもって迎えられがちだが、サプライチェーンの反対側にある縫製工場や畑や鉱山には、現代においても奴隷のような環境で働かされている人々がいる。私たちの需要を安価に満たすために、日給50セントで、自由に水も飲めず武装した見張りがいるような環境でスマートフォンの原料を採掘したり、縫製工場で死ぬまで働くことを強いられたりしている人々がいるのだ。グローバリゼーションがもたらした結果ではあるが、搾取の実態に目を向けず、そこから生み出される商品を購入している私たち消費者も、奴隷主同然である。

モラルに反しない人道的な条件で作られた商品であれば、それを購入することで貧しい国を支援することもできる。値段の安さだけで物を選ばず、購入前に他にモラルに配慮した選択肢がないかどうかを考えてみることだ。グローバリゼーションのルールを変えることはできなくても、グローバリゼーションとのかかわり方を変えることはできる。一人ひとりが積極的にモラルに考慮した商品選びをすることが、大きな変化につながるかもしれない。