ブックレビュー ブックレビュー

原題 What's The Matter With Meat?
著者 Katy Keiffer
分野 食品/社会問題
出版社 Reaktion Books
出版日 2016/4/17
ISBN 978-1780237602
本文 世界で急速に広がる工業型食肉産業。世界市場の大部分を数社が独占する同産業がどのようにして急成長したのか、主要生産拠点であるアメリカ、ヨーロッパ、ブラジル、オーストラリア、アジアでどのように展開されているかを検証する。

工業型食肉産業は商品を低価格で顧客に提供できるうえに、収益性も高い。しかしその一方で、周囲のコミュニティに甚大な悪影響を及ぼしていることも多い。本書は、CAFO(集中家畜飼育施設)内のショッキングな現状や、労働環境、遺伝子組み換え技術、動物福祉、環境への負荷といったトピックに加えて、「国土強奪」(アグレッシブな企業が食肉生産事業のために外国の土地を取得し、現地の農業を破壊すること)など、これまで報告されてこなかったトピックも取り上げ、金融危機後のコモディティ価格の上昇や投資家の動向とともに紹介する。

近い将来、家畜を飼育するのに必要なリソースは不足し、現状の産業モデルは通用しなくなる。著者は、食肉産業やそれに伴う悪影響を批評し、安い肉についつられてしまう消費者に警鐘を鳴らし、政府には代替案を模索するよう、食肉産業そのものには行いを改めるよう訴える。本書は肉を食べることをやめさせようとしているのではない。産業の現状を暴き、消費者が産業システムに組み込まれてしまうことの危険性を明らかにしながら、より質の良い肉を購入することを提案している。

読者は、普段何気なく口にしている肉についての再考を促されるだろう。