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原題 Mushrooms: A Natural and Cultural History
著者 Nicholas P. Money
分野 生物/植物学
出版社 Reaktion Books
出版日 2017/06/15(予定)
ISBN 978-1780237435
本文 キノコと人類の歴史は切っても切り離せない。人々から愛され、崇拝され、ときには疎んじられ、誤解されてきたキノコの生態は、いまだ謎に包まれている。

昔話にはよく毒キノコが出てくるが、人類の歴史におけるキノコは大切な食べ物、薬、そして嗜好品でもあった。古代文明の時代には、その姿かたちから神秘的なものとして崇められ、ローマ帝国の時代には客人に供する高級食材として扱われ、17世紀に入るとキノコの科学的な研究が本格的に始まった。

植物学的には、キノコは菌糸で形成された子実体であり、土のなかや朽ちた木の下に隠れて生息している菌類だ。枯れた植物や動物の死骸の分解者として土壌を豊かにするのに貢献し、植物の成長を助ける。

一方でキノコには恐ろしい面もある。木や灌木に寄生して病気をもたらし、胞子を空気中にばらまいて喘息や花粉症の原因を作る。大量の胞子を放出して一定の地域に雨を降らせるなど、天候にも影響を与える。

キノコの研究に情熱を傾けている気鋭の菌類学者、ニコラス・P. マネーが、ユーモアあふれる筆致で自然科学や歴史、民俗学、文化的観点からキノコの魅力を綴った本書を読んでから改めて周りを見回すと、これまで考えていたのとは異なる新しい自然の摂理が見えてくる。