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原題 Stealing History: Art Theft, Looting, and Other Crimes Against Our Cultural Heritage
著者 Colleen Margaret Clarke, Eli Jacob Szydlo
分野 歴史/美術
出版社 Rowman & Littlefield Publishers
出版日 2017/4/16
ISBN 978-1442260795
本文 ハリウッド映画やTVドラマなどでは、「教養が高く、上質なファッションに身を包んだ盗賊が、美術に関心がなく頭の固い警備員や警察を出し抜いて、鮮やかに美術品を盗み出す」というストーリーが定型となっている。だが、これはフィクションの世界のお話。現実の警察やFBIは、きちんと専門知識を備え、使命感を持って任務に当たっている。

フィクションの世界同様、現実に起こっている美術品犯罪も形態はさまざまだ。盗んだ美術品は、いわゆる闇市場に売られることが多いが、「身代金」を要求されるケースもある。また、直接的な窃盗だけではなく、本物を手元に置きながら偽物を作り、それを売る、贋作販売なども問題となっている。

また、芸術は文化を形作るものであり、これを失うことは国としてのアイデンティティーを失うことに等しい。さらに、こうした美術品は非常に高額であることから、テロ組織が資金源として狙う場合もあるという。

本書では、美術品に関連する犯罪の実例や、歴史的な流れを解説し、美術品犯罪の実態を浮き彫りにする。また、芸術作品だけではなく、遺跡などの考古学的価値の高い物品の窃盗なども取り上げている。