ブックレビュー
  | 原題 | Slums: The History of a Global Injustice | 
|---|---|
| 著者 | Alan Mayne | 
| 分野 | 歴史/文化人類学 | 
| 出版社 | Reaktion Books | 
| 出版日 | 2017/7/1 | 
| ISBN | 978-1780238098 | 
| 本文 | 世界人口の半数以上は都市住民で、そのうち10億人がスラムと呼ばれる地区に住んでいる。スラムは19世紀にイギリスで発生したと言われ、都市の貧困層が居住する過密した区域を指す。現在、世界の大都市のほとんどに、そういった貧困地区が存在しているが、実際のところ、スラムとは何なのか? なぜ発生したのだろうか? スラムと聞いて思い浮かべる独特のイメージがある。たとえば、社会の最底辺の人々が住む閉鎖的で孤立した地区、一度住んだら抜け出せない場所、病気と貧困……。しかし、現実はそうでない。スラムという言葉は誤解を生み、差別や偏見を作り出している。スラムのイメージは政策にも利用されてきた。スラムの語源は明らかではないが、19世紀初頭にロンドンで発生した英語のスラングは、国境を越え、言語の壁を越え、世界の都市の貧困層を社会から隔離し、不平等と社会的不正を肯定する役割を果たしてきた。 しかし、スラムと呼ばれる地区の実態は、ステレオタイプのイメージとは異なり、活気に満ちた一種のコミュニティだ。本書は、都市の貧困層とスラムという言葉の歴史的、政治的意味を解明し、200年の間、社会がスラムをどう見てきたか、スラムに対してどのような政策を行ってきたかを明らかにする。  |