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原題 Prison Food in America
著者 Erika Camplin
分野 文化/歴史
出版社 Rowman & Littlefield
出版日 2016/12/8
ISBN 978-1442253476
本文 アメリカの人口における刑務所の収監率は、先進国の中でも突出しており、年間200万人もの囚人が刑務所で暮らしている。一般の人々は「塀の中」の暮らしに興味津々で、歴史的に有名な監獄が人気の観光スポットとなり、テレビや映画、書籍なども、刑務所での生活を取り上げる。だが、塀の中の食文化についてはあまり知る機会がない。

囚人たちにとって、「食」は、単調な刑務所生活における唯一の楽しみだ。塀の中では食べ物が通貨のような役割を果たし、その公平な分配が厳しく監視される。本書では、囚人自らが食べ物を用意するか、それができなければ飢え死にするしかなかった中世英国の刑務所から始まる刑務所の食の歴史を概観し、現代の米国の刑務所における食品納入業者の汚職や、食事のために改宗する囚人、懲罰のために与えられる「ニュートラローフ」と呼ばれる特別食など、刑務所内での食をめぐる事情や人間模様をひも解いていく。

巨大金融詐欺で収監されたバーナード・マドフや、一時収監経験のあるラッパーのリル・ウェインなど、有名な囚人の食の好みもリポートされ、学術的でありながら読みやすさを兼ね備えた一冊。