ブックレビュー ブックレビュー

原題 Vous êtes 10 fois plus intelligent que vous ne l'imaginez!
著者 Christophe Bourgois-Costantini
分野 自己啓発
出版社 First(フランス)
出版日 2018/2/1
ISBN 978-2412031278
本文 「知能」というと、ふつう真っ先に思い浮かべるのはIQだろう。だが、私たちの能力はそれだけで測れるものだろうか。

著者は、コーチングの経験や、さまざまな分野の第一人者たちへのインタビュー経験から、知能には複数種類あるという結論に至った。すなわち、論理・数学的知能、社会的知能、対人的知能、空間的知能、言語的知能、身体的知能、音楽的知能、博物学的知能、時間的知能、精神的知能である。これら10の多重知能(les intelligences multiples)は、人間性の本質を構成するものであり、生まれたときから誰にでも備わっているという。

そもそも、ホモサピエンスの時代、人類は環境に適応するためにさまざまな能力を使ってきた。自分の居場所を知るために空間把握能力を駆使し、捕食者の存在を確認するために音やにおいなどの感覚を研ぎすませた。

生きるということは、本来そういうものである。しかし、数字や合理性、生産性信奉の社会では、そのことが忘れさられ、画一的な物差しだけを用いて「有能」「無能」、「勝者」「敗者」のレッテルが貼られる。現代は、IQテストが考案された20世紀前半のように、工場での生産性だけが重視されるような社会ではない。もっと複雑で不安定であり、むしろ祖先の時代のように、さまざまな環境適応能力に目を向け、伸ばしていく必要のある時代なのだ。

本書の見どころのひとつは、ラファエル・ナダル(テニス選手)、ティエリー・マルクス(料理人)、クロード・ルルーシュ(映画監督)など、50人以上の著名人の言葉が紹介されている点である。みなそれぞれ、自分のなかにあるいくつもの能力と出会い、開花させてきた人たちだ。そして、これらの一流人と同じように、読者も自分のなかの隠された能力を見つけ出すことができるのだと著者は言う。それは決して、彼らの真似をするということではない。自分自身に何ができるかを問い、本来の自分自身と出会うことだ。