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原題 I Think Therefore I Eat: The World’s Greatest Minds Tackle the Food Question
著者 Martin Cohen
分野 哲学/食
出版社 Turner
出版日 2018/11/13(予定)
ISBN 978-1684421992
本文 「我思う、故に我食べる」。では、何を食べるべきか。プロに教えてもらおうと思っても、医者と栄養士では勧める食べ物が異なる。では、哲学者に聞いてみるのはどうだろう。

例えばニーチェは、あらゆる慣習や価値から自由になる「自由精神」を提唱していたが、食べ物の選び方ひとつとっても、我々は自分が想像しているより遥かに狭い自由度しか持ち合わせていないという。食べたいものよりも、健康上の理由や他のさまざまな事情により、食べなければならないものを食べることが多いためだ。

ジャン=ジャック・ルソーは乳製品を、人の性格を築くものであり、人と環境とを結びつける特別な食品であると位置づけている。

経済学者のマルクスに言わせれば、資本主義は人々にとって脅威でしかなく、なかでも食品産業は我々の欲望を惑わせる悪しきものだ。自分自身ストイックな食生活を送っていたマルクスにとっては、生命を維持する目的さえ果たせれば、それ以上は食べることも食料を供給することも無駄でしかなく、ジャガイモさえあればよいと考えていたようだ。

哲学は、身体と心の調和を探求する学問であり、我々は、食べたものによって形作られ、規定される。自分を形作る大事な要素をについて考察を深めることは、なぜ生きるのかという問いへの答えや、生きる目的を知ることにもつながるだろう。