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原題 Mindful thoughts for Cyclists: Finding Balance on two wheels
著者 Nick Moore
分野 スポーツ/自己啓発
出版社 Leaping Hare Press
出版日 2017/3/2
ISBN 978-1782404835
本文 30代まで時間や距離を競うサイクリングを行なっていたニック・ムーアは膝の病気を患ったことで、人生を見直すことになった。以来、サイクリングは瞑想であり、楽しいものだと悟った。本書では意識的な思考をしながらサイクリングすることによって、生き方をも変えるような素晴らしい気づきがあることを、具体例を挙げながら語っている。もちろん心と体をバランスよく鍛えることも重要なことである。

風や雨、登り坂、パンク、暑さ寒さといったあらゆる辛いサイクリングをも楽しくするためには意識を変えることが重要であり、どのように考えればうまくいくか、またそこから得られるマインドフルネス(今を意識すること)がいかに素晴らしいかを説いている。サイクリストは苦痛の中に恍惚を感じ、その瞬間苦痛とマインドフルネスは一体となる。

夜のサイクリングからは、不思議な感覚や野生の動物たちによって気づかされる季節の巡りや自然との一体感を味わうこともできる。また往来でのサイクリングは直感と経験がものを言う。サイクリストは距離や時間よりも内容を充実させる方がずっと楽しい。サイクリングはひとりでするものだが、仲間がいて受け入れてもらえるのが良い。
道に迷うこともサイクリングの醍醐味で、新しい何かを見つけることができる。また短い距離や時間でもサイクリングをする方が良いに決まっている。

自転車の選び方は、自分に合ったものにするのが良い。自転車と乗り手は一体であるから、決して高価な部品や装備が備わっていなくても良い。

子どもの頃は不思議なことに何でも直感でできた。頭であれこれ考えずに自然に自転車に乗れるようになった。自転車はバランスが重要なのだ。私たちの暮らしの中にはそのような奇跡がたくさんある。

最後に、サイクリングとは自由になることであると著者は言う。外へ出て、森や海や街を自由に走ることだ。その瞬間は瞑想をしているのと同じで、マインドフルネスの感覚になる。そう認識することによって傷ついた心身が回復する。サイクリングで養った気づきは欲求から解放してくれる。良いとか悪いとか、正しいとか間違っているといった評価は必要ない。ただ自転車で走っているだけで満足なのだ。

各章は短く簡潔に書かれているため、読みやすく、どの章から読んでも楽しめるようになっている。往年のサイクリストには共感するところが多く、たまらない1冊になるかもしれない。