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原題 Amazon: How the World’s Most Relentless Retailer will Continue to Revolutionize Commerce
著者 Natalie Berg、Miya Knights
分野 ビジネス
出版社 Kogan Page
出版日 2019/1/3
ISBN 978-0749482794
本文 本に限らず、日用品の買い物から動画、音楽までアマゾンに頼る生活をしている人は日本にも多い。なぜ、アマゾンはここまで大きな企業に成長したのだろうか。そして、アマゾンはどこに向かっているのだろうか。

本書は、リテールアナリストとして長年活躍してきた著者が、小売業の巨人、アマゾンの戦略に鋭い洞察を与える一冊である。書籍のネット通販から始まったアマゾンは、本書が執筆された時点で、米国内におけるeコマースの売上の半分以上を占め、2010年当時には3万人だった従業員数が56万人までに増加。また2017年に高級スーパーマーケットのホールフーズを買収し、食品小売にも本格的に乗り出した。本書が出版される頃には、衣料品の売上でも全米ナンバーワンの座に就いているだろうと著者は予測している。

しかし、アマゾンの野心は小売業に留まらないと著者は述べている。なぜなら、現状に満足することなく、顧客にとって長期的な価値を創造することがアマゾンの企業理念であるからだ。そのために、絶え間なくイノベーションを続けていると分析する。

実店舗での販売開始、ドローンによる配達、音声認識(Alexa)の導入、AWS(アマゾンのクラウドサービス)の提供、プライム会員の優遇など、次々に打ち出す戦略が、その証である。さらに、著者は2021年までには製品販売に代わって、AWSや広告、ファイナンスサービスなどのサービスがアマゾンの売上の中心になるだろうと大胆に予測する。

しかし、米議会から独禁法違反ではないかと厳しい目を向けられるなど、巨大化したアマゾンの壁も指摘。アマゾンに危機は訪れるのだろうか。著者の考えではアマゾンは生き残り、さらなる成長を遂げるという。

小売業界の巨人に押しつぶされて消えていく企業もあるだろうが、本書には生き残りのためのヒントが書かれている。また、アマゾンが消費生活に与える影響力にも言及。そういった意味で本書は、同業の小売業者のみならず、消費者にとっても必読の書である。