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原題 Photography and Sport
著者 Mike O’Mahony
分野 写真/スポーツ競技
出版社 Reaktion Books
出版日 2018/9/10
ISBN 978-1780239941
本文 平昌五輪のフィギュアスケート男子フリーで連覇を達成した羽生結弦選手の4回転ジャンプ、サッカー・ワールドカップでベスト8進出を決めた日本代表のゴールシーンなど、今年も素晴らしいスポーツ写真を私たちは目にし、感動を分かち合ってきた。これは、今や日常的な風景である。

しかし、スポーツ写真の始まりを知る人は少ない。1843年に発明直後のカロタイプで撮ったテニス選手の写真が今も残されている。この写真が撮られた時期は、奇しくも近代スポーツが成立した頃と一致している。当時の技術では、競技の撮影は簡単ではなかったものの、初期の写真家たちはスポーツを題材にするようになり、以降スポーツ写真の歴史は現在まで続いている。

本書は、過去150年以上の間に撮られた写真をふんだんに使って、写真撮影とスポーツの関係を紹介する。カメラの進歩によって、写真は選手の一瞬を切り取るようになり、よりインパクトの強いものになっていく。そして19世紀後半から20世紀初頭にかけて、写真を多く載せた新聞が人気となったことで、写真は視覚メディアとしての立場を確立した。

その後、スポーツ人気が高まるにつれ、選手が広告写真に登場するようになる。写真がスポーツの枠を越えて社会全体の話題となることもある。著者は、写真におけるジェンダーや政治にも踏み込んでいく。

スポーツ写真といっても社会と切り離すことはできない。その時々の社会情勢や文化が反映される。そういった意味で、本書は近代から現在までの文化史としても読める。