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原題 Vast Expanses: A History of the Oceans
著者 Helen M. Rozwadowski
分野 地球科学/歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2018/9/10
ISBN 978-1780239972
本文 本著は、海洋学の専門家で数多くの学術書を出版してきた著者が、人と海に関する文化・環境・地政学の歴史について、一般の読者向けに執筆した一冊である。

地球の表面積の7割が海であるという知識を持っている人は多いだろう。しかし、大半の人たちは広大な面積を占める海と人の関わりについて深く考えずに生活している。

海を眺めていると、大昔の漁師や海辺の住人もきっと同じ海を見ていたのだろうというロマンが広がる。しかし、人が住んでいる陸地と同様に海も変化してきた。古代から続いている海との結びつきは、工業化やグローバル化によって発展し、強くなっている。また、海洋に関する知識は膨大なものとなった。知識を獲得したことで、人は海洋資源を探索し、海を渡って国家権力を拡大してきたと著者は指摘する。

しかし、その結果は良いものばかりではない。海洋資源の枯渇やプラスチックの海洋汚染が問題視されている。また、気候変動は海水温の上昇をもたらす。著者は人類の未来のためにも、海は永久に変わらないという考えを捨てるべき時が来たと訴える。

私たち日本人は、海の恵みに生かされてきた。しかし、海産物を大量に消費している問題は世界中に影響を与える。本書にあるように、海は人がいなくなっても存在し続けるだろうが、人は海なくしては生きられない。

本書は身近にありながら、よく知らない海について、立ち止まって考える機会を与えてくれる良書である。