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原題 The Digital Party
著者 Paolo Gerbaudo
分野 政治/社会
出版社 Pluto Press
出版日 2018/12/14
ISBN 978-0745335797
本文 2018年3月、イタリアでは「五つ星運動」が議席数で第一党となった。2009年に設立されたこの政治団体は、ブログを主体とした活動で徐々に勢力を伸ばした、いわゆるインターネット政党である。イタリアだけではない。EU諸国で活動範囲を広げつつある「海賊党」、スペインの若者に支持され第三党となった「ポデモス」、フランスの「服従しないフランス」、イギリスの「モメンタム」など、各地で次々と新たな種類の政党が出現している。著者はこれをデジタル政党と名付け、その成り立ちや今後の傾向について説明する。

これらの政党の一番の特徴は、デジタル技術によって支えられているということだ。また、グローバル化によって起こった「民主主義の赤字」を非難し、ビッグデータを活用することで新たなコミュニケーション方法や組織のあり方を提案している。FacebookやTwitter、WhatsAppといった様々なサービスやアプリケーションを駆使し国民と繋がる様は、まるでスタートアップ企業のようでもある。

本作では、社会運動やSNSについて研究している著者がこういった組織的イノベーションの興隆について語るとともに、政治家や活動家へのインタビューを行い、また活動に使用されているテクノロジーについても詳しく分析している。

デジタル政党の意義とは何か? 工業時代に一斉を風靡した大衆政党のような既存の政党とは何が違うのか? 本当に民主的といえるのか? 時代とともに移り変わる政治のあり方を目の当たりにして、我々が抱く質問も丁寧に解き明かす。